さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

資本を売買する資本7 私的簒奪形式における社会的資本の発展

株主はもはや単なる形式にすぎず、ある資本から剰余価値を収奪し、それを別の資本に結合する通路のようなものとになっているといえます。これが重要な点の1つかと。別に株式でなくてもいいのですけど、いわゆる「マネー」を掻き集め、集めては投資してまた集め、分配し、また集め投資する。

この「マネー」はもろもろの詐欺師や山師に集られてますけれども、そもそも貨幣(潜在的資本)の市場は、実態としては、産業諸資本への貨幣資本の割り振りをします。これによって、資本の高速回転と産業間の移動、資本の分解と集中が促されます。

「マネー」とは、集められた他人の金であり、投資された他人の金です。海外のファンドだって他人の金を集めて株を買うのであり、運用するファンド労働者は人様の金で人様の株を買っています。集めたのは他人の金。借りるとは、金の値段を利子として金を買うことです。他人の資本を投資する。

動いている金は、他人の資本、社会的資本、他人の私有、社会的所有です。

そもそも1つの個別産業資本が、労働者に対して、彼等の社会的労働が、彼らの結びつきが、独立して対立的に現れたものでした。そもそも資本とは、社会的労働の集積が独立したものであり、労働者に対して、社会的労働として、社会的な貨幣として相対していたのでした。

私的所有への社会の革命的分解(封建社会の崩壊)は、労働者に対して、彼らの労働が、彼らの生産物である生産生活諸手段が、過去の労働を総括して代表する貨幣が、私的所有という形をとること。

1つの産業資本は社会的労働の独立した姿ですが、私的所有に覆われた私的生産体として存立しています。

こんどは、これらの産業諸資本に対して、社会的労働が社会的資本として、共同資本として独立して現れたものが、いってみれば、信用として展開される利子生み資本なのです。産業諸資本総体に対してその共同資本として貨幣資本の市場が形成されるのです。

産業諸資本に対して社会的資本が分配される。この分配自体がまた私的諸主体による営利として成立し、そこに剰余価値を啄むハゲタカやらハイエナやらが集まってくる。

社会的所有を生産諸主体が分け合って生産するという進歩が、社会的所有を少数者が簒奪するという転倒として実現します。社会的共同事務がピンハネとして成立。

乗っ取り屋的資本のなかにも、こうして私たちは社会的労働の発展が宣言されているのを聴き取ることができます。

《成功も失敗もここでは同時に諸資本の集中に、したがって巨大な収奪に帰結する。……この収奪の実行は……終局的にはあらゆる個人からの生産手段の収奪に終る。これらの生産手段は社会的生産の発展につれて、私的生産手段であることをも、私的産業の生産物であることをもやめるのであり、……それは協同した労働者たちの手にある生産手段、したがって彼等の社会的な所有にほかならない。この収奪は、しかし、資本主義的システムそのもののなかでは少数者による社会的所有の横領として対立的に現われ、また信用がこれらの少数者にますます純粋な山師の性格を与える。》『資本論』第3部MEGA.Ⅱ/4.2,S.503-504.)


横領という対立的現象は、資本主義の発展における資本主義の本質開示でしょう。そこには、社会的労働を横領することが、産業的な社会的労働一般から分離して、明確な形をとって現れています。産業労働内の収奪が、社会的資本からの少数者による横領に転移している、ともいえましょう。

「マネー」は労働者の外に独立した労働者の統一性、社会的労働の指揮可能性であり、社会的労働を収奪する権限に転じた私有であって、横領する少数者は社会的労働組織権を売買し、収奪権限から収奪しているのです。

「純粋な山師の性格」において、社会的労働が賭け事にまで私的形式で発展しており、ここには、社会的労働の進歩が人々に強制する不安定さが、収奪の進歩性、進歩の収奪性が、示されている、ととらえることができます。

資本蓄積に示される資本主義の歴史的傾向がまさに信用という社会的資本の成立において貫かれています。蓄積は、生産手段の集積を前提するだけではなく、あらゆる個人から生産手段を剥奪していく運動です。労働者からの生産手段の収奪は、資本家からの生産手段の収奪へ、あらゆる個人からの生産手段の収奪へと進んでいきます。

収奪によって生産手段は社会的な対象として、あらゆる個人にとっての対象として姿を現すわけです。

思惑・投機の氾濫は社会的生産の私的形式における発展の副産物であり、企業売買によって、労働収奪権の転売によって貨幣(剰余労働)を吸引する人物の存在は、資本主義的な社会的生産過程の発展がとった1つの姿にすぎません。
by kamiyam_y | 2007-08-09 22:43 | 資本主義System(資本論)