さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

日経の昭和天皇靖国発言メモ

富田メモの衝撃

よくはわからないが、火炎瓶らしきものが日経新聞本社に投げられた、と。

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「昭和天皇発言メモ」を掲載して以降の日経新聞はちょっと面白いです。

政治・昭和天皇発言メモ 戦後の総括を迫る価値ある史料:janjan
政治・富田メモ―「政治問題化」を超えて:janjan
富田メモ 天皇『発言』の重み
好みも語らず 側近日記が頼り:東京新聞


日経のスクープ(20日1面、3面、社会面)は、昭和天皇が靖国批判を語ったことを証言するメモを入手して発表したのですから、なかなかのインパクト。

88年に宮内庁長官であった富田朝彦氏が昭和天皇の発言を書きとめたこのメモのなかには、合祀を差止めた筑波宮司を高く評価し、合祀をした松平宮司を批判する言葉が綴られているほか、

「A級が合祀され…中略…だから、私あれ以来、参拝していない……」

とあります。

社会関係としての戦前の天皇の戦争責任(→沖縄タイムス)は別として、昭和天皇の個人的な思いが述べられていることにはまちがいなく、天皇の個人的見解という歴史学的論点について有力な証拠が発見されたと言っていいのではと思います。(とはいえ、日経がこれを出してきたのも、グローバル企業の平均的利害を代表して、参拝批判のスタンスを強めるためであるばかりではなく、参拝批判の正当性根拠として積極的にこれを出したと仮定するならば、天皇の権威を崇拝する国家主義的な傾向に対してこういう天皇の発言が有効だとしても、靖国参拝論者と同じ地平に立つことになる危うさがあるんじゃないか。そういう気分もあるんですけど、ね。)


グローバルで復古的な小泉純一郎


アメリカの金融的な資本主義が主導するグローバルな流れを推進する小泉政治を日経が支持するのも、日本の資本のうちグローバル資本になろうとしている部分の利害を彼が先取りして体現しているからでしょう。この利害にとって靖国参拝は面倒な障害物です。この点では日経にとって総理の参拝はとっても困るわけです。日本の大資本にとって、アジアを舞台とするビジネスを展開することは至上命令のはず。

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asahi.com:小泉首相、天皇発言の「影響」否定 靖国参拝-政治

「宗教法人に対して、あああるべきだ、こうあるべきだと政府としては言わないほうがいい」というのはそのとおりです。しかしこの言葉はそのまま小泉の行動を批判するようにみえます。

小泉がもちだす内面の自由とは、一面では、人間社会の分裂を、人間どうしの孤立を、共同体の解体を意味していて、それ自体はとても貧しい自由です。しかし、抽象的で無内容であるがゆえに、みな平等に《妄想》を信じる自由があるわけで、とりあえず、内面の自由を持ちだすのはよいことでしょう。個人がまったくばらばらに見える現代こそ、じつは個人の人格的属性から社会関係を純粋にモノの力として発展させているのであり、小泉の信じる妄想は、まさにグローバルな経済の展開によって保証されている。しかし、この展開にとってまったく不要となってしまったら、たぶんこの妄想の社会的意味はなくなる。

外敵やら内敵やら、愛国心やら 公党のトップ

政治的支配層が外敵を強調して民衆を抱え込もうとするのはふつうの話とはいえ、この手の妄想を安倍晋三のレベルにまで落として見ると、知性のかけらも見いだされない、愛国心教育という、物悲しい話になります。

で、新聞紙上でやたらとみかける自民党総裁選の記事。原発問題で独自の発言をしている河野太郎の立候補があれば面白いとはいえ、そもそも、一政党の総裁選に公共的な意味があるのか。

あるのなら、国民全体で投票したらよいでしょう。例えば、党員数10万人以上の政党は、《公党》として国民全体に対して開かれるべき、とか。われながらよい案ですが、もしこれに反対して、政党も私的自治組織というならば、新聞やテレビで総裁選を煽るのはおかしな話で、民主党もその他の政党も無視して総裁選ばかり報道するのはヘンじゃないですか。
by kamiyam_y | 2006-07-23 15:48 | 民主主義と日本社会