さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

大工業 Große Industrie/Grande industrie

資本主義は、剰余と蓄積に駆り立てられた無政府的生産の乱舞によって、社会的に制御された生産という未来の要因の醸成を時々その本体として証明する。

というよりも、絶えずそれを露わにしながら、私たちの社会的意識に自己の限界を刻印していく。

マニュファクチュアは、単純な協業から発生した(Das Kapital,Bd.1,12.Kapitel: Teilung der Arbeit und Manufaktur.)。異種手工業の結合と同種手工業の分割という2つの道は、その始まりにおいては、単純な協業の枠内にあるが、やがて、労働者が1つの機能だけに発達した作業場内分業を形成した。

マニュファクチュアの発展はその没落の条件を成熟させ、大工業が、道具の道具機への転化を起点とする機械の自動体系の形成にもとづいて生れる。資本主義は、マニュファクチュアを自己にふさわしくないものとして粉砕し、自らの地盤として、科学の適用である巨大な工業を成立させた。私利追求と、生産手段および労働力の社会化との反発と結合の回転が、資本の生命活動を不断に肥大化する源として、自律する。無政府的生産は極限にまで達し、人間・自然・社会の収奪によって、孤立しあう諸要素を社会的生産過程に結実させていく(13.Kapitel: Maschinerie und große Industrie.)

Die kapitalistische Produktion entwickelt daher nur die Technik und Kombination des gesellschaftlichen Produktionsprozesses, indem sie zugleich die Springquellen alles Reichtums untergräbt: die Erde und den Arbeiter.
(MEW Bd.23a,S.529-530.:MEGA Ⅱ/10,S455-456.)

それゆえ、資本主義的生産は、ただ、同時にいっさいの富の源泉を、土地をも労働者をも破壊することによってのみ、社会的生産過程の技術と結合とを発展させるのである。(岡崎次郎訳)


社会的労働者を形成し労働する諸個人を破壊する敵対的過程を通して、社会的生産過程の形成という自己を否定する自己の本体を資本は現実化していく。

こうして、社会的生産の否定による社会的生産を繰り広げる資本の自己矛盾的展開の確立が、大工業の確立である。「相対的剰余価値の生産」論の叙述は、単に剰余価値を増大する方法を挙げるにとどまるようなものではない。

商品が奏でる悲喜劇の調べの、商品の表に立つ登場人物が歌う世界の根底にあった、社会的生産の否定による社会的生産は、いまや、姿を現し、賃労働する諸個人を社会的な、自己を陶冶する主体として表舞台に飛び立たせるのである。
by kamiyam_y | 2016-01-18 00:19 | 資本主義System(資本論)