さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

産業革命 Industrial Revolution

ちぇっ、まだ咳が取れないな。

産業革命関連の動画を次々とユー・チューブを見ていたら何時間もたってしまった。もったいないので、成果のごく一部分ですが、出しておきます。

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資本主義が自分の足で歩み始めるためには、労働過程の変革が必要です。それが大工業の生誕です。大工業の場面をなすのは、協業すなわち社会的労働です。誰もが同じ作業をする単純な協業は、初期資本主義の大農場や、マニュファクチュアの成立において現れただけとはいえ、協業こそが大工業の境位であり、大工業として完成する労働過程の変革でした。

協業の決定的な点は、社会的計画性にあります。個々の労働力は自覚的に協業という社会的労働力の器官であり、個人の労働は全体の計画の実行のなかで調整されます。とはいえ、労働者自身の協業としてではなく、資本のもとでは、この生産する身体が資本の身体です。孤立しあう労働力を結合するのは資本なのですから。

労働はここでは人間の社会的・類的な能力の発現であって、個人の機械的合計とは異なる社会的な力を形成します。ゆえに、生産手段もまた社会的性格を帯び、生産過程が社会的なものとして実現します。これは私的所有に無媒介にです。

作業を分割して統合する協業、つまりマニュファクチュアに見られる工場内分業は、生産手段と時間の節約、労働の平均化を押し進め、いっそう高度の生産手段と労働時間の計画的配分、生産の計画性をもたらします。

熟練と技能の高度化の反面、1つのことしかできない労働者の存在が資本の流動的本質と対立します。労働者はマニュファクチュアの外では機能しない一面的存在になるとはいえ、まだ労働者から自立した客観的機構がないため、労働者の反抗する力も残っています。道具が専門化する点で労働手段にも変化が現れ、機械が成立し、マニュファクチュアのなかから機械を製造するマニュファクチュアが出現します。

道具の道具機への転化がマニュファクチュア解体の序曲です。産業革命の始まりです。この革命の炎が最初に燃えあがったのは、綿糸・綿布の生産領域でした。

紡ぐ道具は何でしょう。紡錘(ぼうすい)/錘(つむ)/スピンドルspindleといいます。これがわかりやすい。
紡錘車で綿の糸作り - YouTube

ちなみにこの動画を投稿している方が所属していると思われる「人間の歴史の授業を創る会」とは、遠山啓らと『ひと』を刊行した白井春男が代表になっている会。『ひと』は水道方式や仮設実験授業を紹介し、1つの民間教育運動をつくった雑誌です。遠山啓が書いてたころは読んでました。
『ひと』バックナンバーリスト(PDF版)|太郎次郎社エディタス

織るさいの要をなすのは、綜絖(そうこう)heddleと杼(ひ)shuttleです。綜絖は経糸(たていと)を一本おきに持ち上げ、押し下げ、杼は上下に開いた経糸の間に緯糸(よこいと)を通します。この子供用の織機の解説を見て下さい。とくに実際に織る後半以降。
はじめてのおりきイネス1【織り始め】楽しく手織りを始めましょう - YouTube

さて、糸を紡ぎ巻き取る紡錘が、手で扱う手の直接の延長から、機構の部分に転化したものが紡績機です。手の紡錘から機構の紡錘に発展することで、道具が人間の身体の制限から解放され、機構の道具として自由に設計されるようになります。

ミュール紡績機は、レール上の走錘車が移動し、スピンドルの列が糸に縒りをかけながら遠ざかり(外走)、反転して元の位置に戻りつつ巻き取りを行います(内走)。動いている様子を見たければ、Spinning Muleで検索するとよいでしょう。

ロバート・オーエンRobert Owen(1771- 1858)で有名なニュー・ラナークNew Lanarkは世界遺産として当時の様子が復元されており、そこにある工場でミュールの運転が実演されているようです。
http://www.lib.hit-u.ac.jp/service/tenji/owen/pamph2.pdf
New Lanark World Heritage Site

ワットWattの蒸気機関Steam Engineやベッセマー転炉Bessemer Converterなども検索してみると面白いはず。

マニュファクチュアの限界が労働者の抵抗にあったとすれば、機械の採用は、道具を労働者の身体から独立した労働手段体系の器官に変えることでこの限界を突破します。労働手段が労働手段に制御され体系化します。発達した機械は、異なる役割をもつ3部分から構成されます。①労働対象に変化を与える道具機(作業機)、②動力をもたらす原動機、③運動を変換し、調節し、伝える伝導機構です。

機械は自動制御機構を具備して自動体系工場となり、変革は交通革命(鉄道網/航路)、情報革命(ロイターさんの海底通信ケーブル!)へと拡がっていきます。まさに資本主義は大工業によって1つの世界史へと人類を統合する原動力になるのです。

大工業は協業を完成し、資本の力として社会的労働の組織を実現します。社会的労働の展開は公共性の深化であり、公共的なものに関与する民主主義の発展をもたらします。公共的なものの対立的現象は、人権の抽象態を否定し、人間を陶冶します。人間開発の通過点としての資本主義の意義はまさに大工業によって与えられるといっても過言ではありません。

人権の具体化として着目すべきは、工場法です。これもまた大工業の重要な産物です。わが亡き後に洪水は来たれという個別資本の剰余労働への渇望は、労働力供給という共同利害によって制約されており、労働者が労働日を正常な時間に押しとどめる権利も国家を介することなくしては実現しません。工場法に現れた社会による制御は、私的領域内に生産過程が公共的実態として出現する矛盾の解決形態であり、資本主義が展開する条件に転じていきます。同時にまた私的生産がますます社会的理性による制御を求めるという矛盾の提示でもあります。

さらにもう1つ。学校教育です。これも大工業の産物です。資本は職人を失業させ子供を工場に吸収しますが、それは露骨な搾取なので学校教育を対置せざるをえません。子供を搾取から救済すること、子供の学ぶ権利、労働力の育成は私的諸資本の外部の公的機関を介した社会的制御によって実現します。

子供が危険な作業場で搾取されるのは、20世紀の合衆国にもありました。全米児童労働委員会のためにルイス・ハイン(Wikipedia)が撮影した写真が、当時の子供たちの様子をリアルに伝えています。
Amazon.co.jp: ちいさな労働者―写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち: ラッセル・フリードマン, Russell Freedman, ルイス・ハイン, 千葉 茂樹: 本
邦訳書は大半の写真ページをページにあわせ、裁ち切りにして見やすく、かつ迫力のある表示にしています。それはそれとして成功していると思います。トリミングされていないもとの写真も興味深いので、写真と英語に関心のある方は、原書もおすすめです。
Amazon.co.jp: Kids at Work: Lewis Hine and the Crusade Against Child Labor: Russell Freedman, Lewis Wickes Hine: 洋書
by kamiyam_y | 2014-11-29 21:59 | 資本主義System(資本論)