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松文館裁判

Excite エキサイト : 社会ニュース 06月16日12時59分共同通信

……「蜜室(みっしつ)」を販売したとして、わいせつ図画頒布1の罪に問われた東京高裁は16日、懲役1年、執行猶予3年の1審東京地裁判決を破棄、罰金150万円を言い渡した。……


「松文館」社長貴志元則被告の控訴審判決で、高裁は、猶予付き懲役刑を破棄し罰金を言い渡したそう。

マンガを書いた作家、編集局長、そして社長貴志さんが性表現を理由に逮捕された事件です。
起訴された貴志さん、再度有罪の高裁判決となりましたが、マンガで有罪、しかも警察の恣意的な摘発を裁判所が認めてしまうなんて、いやな時代です。

強制や脅迫による自白を排除する原則(憲法38条2項:自白法則)が守られていないことや、
「代用監獄」による自白強要、
猥褻物頒布を罰する「刑法175条」の違憲性

といった問題は、自由で民主的な社会をつくるために解決しなければならない大問題。

捜査機関が、脅迫や誘導にたよって、自白を採取しようとするのはいわば法則であって、これを避ける工夫として、被疑者の身柄拘束場所を捜査機関から引き離すことが、近代的な原則とされてきた。日本でも、建前上は、法務省管轄の拘置所が拘束場所だ。
ところが、じっさいは、警察留置所に起訴前拘束されてしまうという不合理がまかりとおったまま。

この事件を扱っている長岡義幸『「わいせつコミック」裁判 ― 松文館事件の全貌』道出版 は、取り調べの様子からレポートしていて、憲法学者奥平康弘や、社会学者宮台真司らの弁護側証言も掲載されていて、ためになる。本書によれば、この逮捕劇のきっかけは、一般人からの投書。息子の机のなかからマンガを見つけて怒った父親が、「マンガを取り締まれ」と要望したのだが、この投書がある議員によって、警視庁生活安全部保安課に転送されたという。

この国会議員が、警察庁・警視庁OB の平沢勝栄。

ちなみに、このおじさんじつは無言電話おじさんでもあるらしい。
警察批判を続けているジャーナリスト寺澤有氏は彼から無言電話をうけたそう(ベンジャミン・フルフォード『日本マスコミ「臆病」の構造』宝島社、53ページ以下)。

そもそも成人向けと明記されている出版物なのに、それをガキがもっていた。そのガキの机をこれまた父親が勝手にあけてこれを見つけ出した。
そして、取締要請の投書をした。これを平沢勝栄が警視庁に送り、警察が摘発を行った。
権力の乱用である。
「わいせつ」など後からつけた理由だろう。
そんなあいまいで伸縮可能な道徳を基準にする摘発が、成熟した近代社会のすがたなのだろうか。

出版社社長がいったい有罪になるような何をしたのであろうか。
理不尽である。

青少年に売らない販売規制ならただの条例。
警察がわいせつだなどと主張して表現の自由を弾圧する。
自由な個人に対する抑圧は、ここから始まる。

「そう、この種の規制は、いつも『わいせつ』から始まる」(「サイバー検閲」北海道新聞特集「あなた見られています:監視と安全のはざまで」第2部「統制へ」④・6月4日土曜日朝刊34頁)。

参照 
流対協  
松文館裁判  
AMI 
kitanoのアレ
メールマガジン「PUBLICITY」(竹山徹朗:登録申込先)バックナンバーに関連記事多数。
by kamiyam_y | 2005-06-17 18:11 | 自由な個人の権利と国家