さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

苦悩の臭い取り

歓送迎会の季節ですね。ススキノでタクシーに乗りました。

「酔ってほんとに容体が悪くて申し訳なさそうに吐くんだったらそりゃあまあ、しかたないって許せますよ」

世間話をしているうちにテーマがたちの悪い酔っぱらいに移ってきました。

「でもね、ただの酔っぱらいでさ、起きてんだか寝てんだか、生きてるんだか死んでるんだかわかんなくて、夜中で割増料金なのに『高いぞ、こら』とか文句言ったつぎの瞬間、ゲロどばっと吐きだしてんだからやってらんないよね」

小鳥たちが踊って愛でるかわいらしい噴水みたいに、ゲロを街中で可憐に飛ばしてるお嬢さんの動画をYouTubeで見たことがあります。嘔吐はありふれた生理現象。飲み屋街であれば驚嘆すべき話でもない。私とてタクシー内で気分が悪くなったことならあります(吐くのは家に着いてから)。

「そんなにいるんですか、吐く人。あとの掃除がたいへんですよねえ」

「ですよ。こっちはゲロの処理して時間つぶしちゃってしさ。シートカバー変えたり、臭いを取ったりで。ほんとはその分お金払ってほしいくらいですよ。もちろんもらいませんけどね」

ゲロ処理は生態系において人知れず菌や虫や鳩が行うだけではありません。吐く人もいれば掃除する人もいます。それが人間の社会的連鎖というもの。

「酔っ払いだけじゃないですよ。乗り逃げする人だっているんですよ」
「へぇー。泥棒じゃないですか」

「車運転して楽しそうにみえても、12時間も座りっぱなしで体もきついしね。まあ、お姉ちゃんのミニスカート姿はちょっとうれしいけど。ってもう見飽きたか」
華やぐギャルの癒し力だけじゃ運転労働における人間快復はできない。

「でも、女の子だと吐いたら、申し訳なさそうにおかね置いてく人いるんですよ。いらないって言っても」
「意外と若い人の方がよくできてる」
一般的結論をこの例だけから引きだすわけにはいきませんが、社会の成熟は世代交代を介していくわけですから、進歩したより人間的な思想を体現するのは若い世代。

「あと、ゲロだけじゃなくて、ションベンやウンコたれる人もよくいるんですよ」
アルコール入るとお腹がゆるくなる人います。酔えばいろんな筋肉も弛緩しますし。

処理のために嘔吐物凝固剤とか除菌剤を経費で買ってるんでしょうかね、聞かなかったですけど。
by kamiyam_y | 2011-03-06 23:58