さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

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産業革命 Industrial Revolution

ちぇっ、まだ咳が取れないな。

産業革命関連の動画を次々とユー・チューブを見ていたら何時間もたってしまった。もったいないので、成果のごく一部分ですが、出しておきます。

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資本主義が自分の足で歩み始めるためには、労働過程の変革が必要です。それが大工業の生誕です。大工業の場面をなすのは、協業すなわち社会的労働です。誰もが同じ作業をする単純な協業は、初期資本主義の大農場や、マニュファクチュアの成立において現れただけとはいえ、協業こそが大工業の境位であり、大工業として完成する労働過程の変革でした。

協業の決定的な点は、社会的計画性にあります。個々の労働力は自覚的に協業という社会的労働力の器官であり、個人の労働は全体の計画の実行のなかで調整されます。とはいえ、労働者自身の協業としてではなく、資本のもとでは、この生産する身体が資本の身体です。孤立しあう労働力を結合するのは資本なのですから。

労働はここでは人間の社会的・類的な能力の発現であって、個人の機械的合計とは異なる社会的な力を形成します。ゆえに、生産手段もまた社会的性格を帯び、生産過程が社会的なものとして実現します。これは私的所有に無媒介にです。

作業を分割して統合する協業、つまりマニュファクチュアに見られる工場内分業は、生産手段と時間の節約、労働の平均化を押し進め、いっそう高度の生産手段と労働時間の計画的配分、生産の計画性をもたらします。

熟練と技能の高度化の反面、1つのことしかできない労働者の存在が資本の流動的本質と対立します。労働者はマニュファクチュアの外では機能しない一面的存在になるとはいえ、まだ労働者から自立した客観的機構がないため、労働者の反抗する力も残っています。道具が専門化する点で労働手段にも変化が現れ、機械が成立し、マニュファクチュアのなかから機械を製造するマニュファクチュアが出現します。

道具の道具機への転化がマニュファクチュア解体の序曲です。産業革命の始まりです。この革命の炎が最初に燃えあがったのは、綿糸・綿布の生産領域でした。

紡ぐ道具は何でしょう。紡錘(ぼうすい)/錘(つむ)/スピンドルspindleといいます。これがわかりやすい。
紡錘車で綿の糸作り - YouTube

ちなみにこの動画を投稿している方が所属していると思われる「人間の歴史の授業を創る会」とは、遠山啓らと『ひと』を刊行した白井春男が代表になっている会。『ひと』は水道方式や仮設実験授業を紹介し、1つの民間教育運動をつくった雑誌です。遠山啓が書いてたころは読んでました。
『ひと』バックナンバーリスト(PDF版)|太郎次郎社エディタス

織るさいの要をなすのは、綜絖(そうこう)heddleと杼(ひ)shuttleです。綜絖は経糸(たていと)を一本おきに持ち上げ、押し下げ、杼は上下に開いた経糸の間に緯糸(よこいと)を通します。この子供用の織機の解説を見て下さい。とくに実際に織る後半以降。
はじめてのおりきイネス1【織り始め】楽しく手織りを始めましょう - YouTube

さて、糸を紡ぎ巻き取る紡錘が、手で扱う手の直接の延長から、機構の部分に転化したものが紡績機です。手の紡錘から機構の紡錘に発展することで、道具が人間の身体の制限から解放され、機構の道具として自由に設計されるようになります。

ミュール紡績機は、レール上の走錘車が移動し、スピンドルの列が糸に縒りをかけながら遠ざかり(外走)、反転して元の位置に戻りつつ巻き取りを行います(内走)。動いている様子を見たければ、Spinning Muleで検索するとよいでしょう。

ロバート・オーエンRobert Owen(1771- 1858)で有名なニュー・ラナークNew Lanarkは世界遺産として当時の様子が復元されており、そこにある工場でミュールの運転が実演されているようです。
http://www.lib.hit-u.ac.jp/service/tenji/owen/pamph2.pdf
New Lanark World Heritage Site

ワットWattの蒸気機関Steam Engineやベッセマー転炉Bessemer Converterなども検索してみると面白いはず。

マニュファクチュアの限界が労働者の抵抗にあったとすれば、機械の採用は、道具を労働者の身体から独立した労働手段体系の器官に変えることでこの限界を突破します。労働手段が労働手段に制御され体系化します。発達した機械は、異なる役割をもつ3部分から構成されます。①労働対象に変化を与える道具機(作業機)、②動力をもたらす原動機、③運動を変換し、調節し、伝える伝導機構です。

機械は自動制御機構を具備して自動体系工場となり、変革は交通革命(鉄道網/航路)、情報革命(ロイターさんの海底通信ケーブル!)へと拡がっていきます。まさに資本主義は大工業によって1つの世界史へと人類を統合する原動力になるのです。

大工業は協業を完成し、資本の力として社会的労働の組織を実現します。社会的労働の展開は公共性の深化であり、公共的なものに関与する民主主義の発展をもたらします。公共的なものの対立的現象は、人権の抽象態を否定し、人間を陶冶します。人間開発の通過点としての資本主義の意義はまさに大工業によって与えられるといっても過言ではありません。

人権の具体化として着目すべきは、工場法です。これもまた大工業の重要な産物です。わが亡き後に洪水は来たれという個別資本の剰余労働への渇望は、労働力供給という共同利害によって制約されており、労働者が労働日を正常な時間に押しとどめる権利も国家を介することなくしては実現しません。工場法に現れた社会による制御は、私的領域内に生産過程が公共的実態として出現する矛盾の解決形態であり、資本主義が展開する条件に転じていきます。同時にまた私的生産がますます社会的理性による制御を求めるという矛盾の提示でもあります。

さらにもう1つ。学校教育です。これも大工業の産物です。資本は職人を失業させ子供を工場に吸収しますが、それは露骨な搾取なので学校教育を対置せざるをえません。子供を搾取から救済すること、子供の学ぶ権利、労働力の育成は私的諸資本の外部の公的機関を介した社会的制御によって実現します。

子供が危険な作業場で搾取されるのは、20世紀の合衆国にもありました。全米児童労働委員会のためにルイス・ハイン(Wikipedia)が撮影した写真が、当時の子供たちの様子をリアルに伝えています。
Amazon.co.jp: ちいさな労働者―写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち: ラッセル・フリードマン, Russell Freedman, ルイス・ハイン, 千葉 茂樹: 本
邦訳書は大半の写真ページをページにあわせ、裁ち切りにして見やすく、かつ迫力のある表示にしています。それはそれとして成功していると思います。トリミングされていないもとの写真も興味深いので、写真と英語に関心のある方は、原書もおすすめです。
Amazon.co.jp: Kids at Work: Lewis Hine and the Crusade Against Child Labor: Russell Freedman, Lewis Wickes Hine: 洋書
by kamiyam_y | 2014-11-29 21:59 | 資本主義System(資本論)

生の破壊

12万5千人にいまだに避難生活を強いている原発事故。東電に4900万円の賠償を命じた判決。まともで画期的。
東京新聞:原発避難「うつで自殺」 東電に賠償命令 福島地裁:社会(TOKYO Web)

自殺までの経緯に原発の本質がつまっています。
「自殺と原発事故に因果関係」東電に賠償命令 NHKニュース

自己の親しんだ世界を突如奪われる苦しみ、自己を引き裂かれ、自己を略奪される悲劇。
自分の畑、自分の家畜、自分の家が自分から切り離され死ぬこと、地域の人間関係が枯れ果てること、自分を囲んでいた美しい風景から切断されることは、その人の生を絶望的に狭めてしまいます。

長時間労働を促進する反労働者的法解体をめざす蓄積欲求に対して縛りを外してはなりません。前回の安倍政権が企んで失敗したホワイトカラー・エグゼンプションですから、今回も断固阻止を。
【ホワイトカラー・エグゼンプション】 第1次安倍政権でも検討したが、「過労死促進」などの批判を浴びて断念した経緯があるいわく付きの制度 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)
新労働時間制度:過労死遺族、導入中止を申し入れ - 毎日新聞

無論誰の目にも明らかなとおり、労働者総体が「創造的な働き」を求めて労働時間規制を取り払えと要求したことなどありません。労働力を買う側の長時間使用の権利を「創造的」と称しているだけであり、買う側の「自由」は実態としては労働者の自己の生産手段からの自由(分離)、労働者が他人の手中にある自己の社会的生産体系によって過労死する自由にすぎません。
by kamiyam_y | 2014-08-27 19:29 | 民主主義と日本社会

《子供の人権》《賃金労働者の人権》vs原発共同体

公衆の人口放射線限度は国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告によって1mSv(ミリシーベルト)です。同委員会の勧告にもとづいて国内法令では放射線作業を行う労働者は5年100mSvが限度。

3 .放射性固体廃棄物埋設処分に係る放射線防護に関する国際的な考え方:文部科学省
ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08) - ATOMICA -

労働安全衛生法
第二十二条  事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一  原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
二  放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害


電離放射線障害防止規則
(管理区域の明示等)
第三条  放射線業務を行う事業の事業者(第六十二条を除き、以下「事業者」という。)は、次の各号のいずれかに該当する区域(以下「管理区域」という。)を標識によつて明示しなければならない。
一  外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域

(放射線業務従事者の被ばく限度)
第四条  事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
2  事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

医療法施行規則
(濃度限度等)
第三十条の二十六
3  管理区域に係る外部放射線の線量、空気中の放射性同位元素の濃度及び放射性同位元素によつて汚染される物の表面の放射性同位元素の密度は、次のとおりとする。
一  外部放射線の線量については、実効線量が三月間につき一・三ミリシーベルト

(線量限度)
第三十条の二十七  第三十条の十八第一項に規定する放射線診療従事者等に係る実効線量限度は、次のとおりとする。ただし、放射線障害を防止するための緊急を要する作業に従事した放射線診療従事者等(女子については、妊娠する可能性がないと診断された者及び妊娠する意思がない旨を病院又は診療所の管理者に書面で申し出た者に限る。次項において「緊急放射線診療従事者等」という。)に係る実効線量限度は、百ミリシーベルトとする。
一  平成十三年四月一日以後五年ごとに区分した各期間につき百ミリシーベルト
二  四月一日を始期とする一年間につき五十ミリシーベルト
三  女子(妊娠する可能性がないと診断された者、妊娠する意思がない旨を病院又は診療所の管理者に書面で申し出た者及び次号に規定する者を除く。)については、前二号に規定するほか、四月一日、七月一日、十月一日及び一月一日を始期とする各三月間につき五ミリシーベルト
四  妊娠中である女子については、第一号及び第二号に規定するほか、本人の申出等により病院又は診療所の管理者が妊娠の事実を知つた時から出産までの間につき、内部被ばくについて一ミリシーベルト


被曝の人体への影響はさしあたり、皮膚損傷のように閾値となる一定線量を超えた場合に生命体として必ず影響が現れる「確定的影響」と、癌のように閾値がない「確率的影響」とに分類できます。閾値がないからこそ低線量被曝の危険性が考慮されねばなりません。

福島原子力発電所_Q&A
低線量被曝の危険度

低線量被ばくの人体への影響について:近藤誠・慶応大一般社団法人 サイエンス・メディア・センター Science Media Centre of Japan

人口放射線年間限度1mSvというのは、自然被曝や治療以外に積極的に被曝することを推奨するような数値ではもちろんない。事業者が管理区域にしなければならない基準は3ヶ月で1.3mSv、年に直すと5.2mSv。放射線業務従事者の限度は5年で100mSv。低線量被曝は閾値なしに確率的影響を及します。

被曝線量が20mSv/年を下回っている場合でも労災が認定されています。

原発労災認定状況関西労働者安全センター/働く人のSafety&Health

1993.5.6 申請1994.7.27 支給決定
静岡/磐田 中部電浜岡原発 計測装置の点検作業 慢性骨髄性白血病 81.3-89.12の8年10ヶ月で50.63mSv  1991.11死亡

この方はなんと29歳の若さで亡くなってます。

静岡新聞「浜岡原発の選択」

政府は、20mSv/年、1mSv/年の20倍も子供たちに浴びせるつもりなのか、驚きを禁じえません。

福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について:文部科学省
…児童生徒等が学校等に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし、引…


18歳未満では放射線業務は禁止ですよ。

労働基準法
(危険有害業務の就業制限)
第六十二条
○2  使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。


しかも子供は放射線の影響に敏感。汚染されているのも校舎・校庭だけではなく、地域そのもの。子供を過酷な原発労働現場に投入するようなもんです。子供の人権無視も甚だしいなんと残酷な対応でしょうか。私たちの社会がいつそんな選択をしたのか。

なんで東電の事故と政府の隠蔽体質的対応のせいで子供たちがそんな目にあわなきゃならないのか。

Fukushima-Katastrophe: Japanlegt hohe Strahlengrenzwerte fr Kinder fest - SPIEGEL ONLINE - Nachrichten - Wissenschaft
http://www.twitlonger.com/show/a1bk9a

日弁連 - 「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明
従前の基準(公衆については年間1mSv)は、様々な社会的・経済的要因を勘案して、まさに「安全」と「社会的便益の両立を考えて判断」されていたものである。他の場所で教育を受けることが可能であるのに「汚染された学校で教育を受ける便益」と被ばくの危険を衡量することは適切ではない。この基準が、事故時にあたって、このように緩められることは、基準の策定の趣旨に照らして国民の安全を軽視するものであると言わざるを得ない。


子供が勉強できるようにと子供のことを考えているふりをしながら、見捨ててるんじゃねえか、ってことです。子供は大人よりも被爆の影響を受けるのですから、「子どもが被ばくすることはできる限り避けるべきである」。子供の被曝限度引上げによって、国も県も福島の子供たちの健康を真剣に配慮しているのではないことが明白になってます。政官財学メディアの原発利権集団は子供たちに代って被爆すべし。

政府は今ごろになってやっと放射線量のマップを出しましたね。

30キロ圏外でも高い線量 政府、分布マップ初めて公表-北海道新聞[道外]

一目瞭然。放射線量の高い地域は同心円の警戒区域を越えて原発から北西方向に伸びています。記事によると、浪江町の一部では推定年間積算放射線量が235.4mSvという高さ。

チェルノブイリ:因果関係調査なし 放射線障害孫の代まで - 毎日jp(毎日新聞)

共同体の権力は人民から分離して、私的物質的利益に突き動かされることは日本もソ連も同じ。「(当時のソ連)政府は深刻な問題は起きないといっていた」って、この間に同じような国内安全報道の欺瞞に私たちも気づかされたわけです。そんなソ連でも、5mSv/年が「移住義務」の基準だったらしい。

チェルノブイリの避難基準: サロン金曜日@高知

住民が避難する権利を保障する体制をつくる能力・気力が政府にないというだけではなく、政府と東電の責任逃れのためでしょう。人民による東電監視なしには、政府も東電も証拠隠滅と「事故はたいしたことない」キャンペーンに走ります。責任追及は後でなんて言っていたら真相究明もできません。社会的生産過程の公開を否定する企業権力に対して公開を要求するのが日本の民主主義に対して世界が要請していること。

政府や東電という名の疎外された社会力の人間的姿態は、労働者の安全管理を証拠隠滅のためにも否定しているよう。

福島第1原発:「ババ引くのは作業員」嘆く下請け社員 - 毎日jp(毎日新聞)

放射線管理手帳に記載しないなんて、下請作業員を人間として扱わないにもほどがある。すでに原発作業員の250mSvへの上限引き上げ(厚生労働省:(5)原発事故関係)において、作業員個人の健康は否定して彼等を作業の手段として使うという全体主義的な関係が露出していましたけど。

東電の労組は、労働する諸個人の普遍的な結合のメンバーであるならば、賃金労働者階級の一員であるならば、下請け孫請け作業員の労働条件改善、非正規雇用群との連帯を打ち出すべきです。さらに脱原発、情報公開を方針にしたら立派です。それができないのであれば、日本の労働組合のありかたの限界、個別資本の力に(成長主義の力に)吸収されていく企業別組合の限界でしょう。

原発が地域の労働市場や労働者の安全管理をいかに歪めてしまったことか。ポンプ点検会社の労働者が原発復旧作業に駆り出されるんですから。働く人々が自分の専門性を社会的分業に自覚的につなげる(社会的生産において相互承認する)のではなく、日本経済の二重構造において歪んだ労働力供給によってわけの分からん場所に派遣されている。人間が自己の意思を否定された物として消費されるという経済の実態があからさまです。下請会社が仕事を受注するために従業員の累積線量を過少申告するのも、労働者の健康より企業の都合を優先する無政府的開発の敵対性があらわ。原発が非正規雇用労働者によって支えられていることは『ニューヨーク・タイムズ』の記事にもあるとおり。

Day Laborers Brave Risks at Japan’s Nuclear Plants - NYTimes.com
日雇いで放射能に立ち向かう労働者たち - 福島原発事故 海外での報道

原発による地域振興は、地域の産業構造も財政構造もいびつに展開させます。4月24日 の『道新』3面で佐藤栄佐久・前福島県知事が地域の原発依存を「麻薬中毒」と呼んでいるように、一時的に原発マネーを注射しても、地域は産業が原発中心にモノカルチャー化してしまい、健全な形の発展が妨げられる。原発に物言えず「暗さ」(内橋克人『日本の原発、どこで間違えたか』朝日新聞出版、3頁)が漂う。一瞬の事故が街も村も山も川も、思い出も生活も、精神的な絆も、健康も、人々の自己の世界のあらゆる場面を崩壊させる(これほど高コストなものがありましょうか)。

地域の発展はカネの力に翻弄される発展ではなく、自覚的な発展、すなわち民主主義の発展として遂行しなければなりません。

中部電力は旧浜岡町に「財政協力金」と名づけて68億円も渡してます。カネの支出は民主的に管理されず地域コミュニティも混乱。

静岡新聞「浜岡原発の選択」

原発利権による開発は人間を目的とする開発ではなく、無政府的な貨幣のための開発であり、この成長主義の手段となったのが理系の閉鎖的、非社会的・反社会的集団。

記者の目:「原子力ムラ」の閉鎖的体質=日野行介 - 毎日jp(毎日新聞)

一部の理系の研究者の原爆開発能力誇示欲求は、もちろん事故や廃棄物処理や原発のおかれた社会的関係なんて考えない。技術開発は民主主義によって管理されねばなりません。

発電技術も社会システムの問題です。『道新』の社説も脱原発。

東日本大震災 エネルギー計画 「脱原発」の国民論議を(4月20日)-北海道新聞[社説]

原発頼みで発電しているフランスでも、『ル・モンド』誌がチェルノブイリとフクシマを並べて扱い、脱原発を主張。

チェルノブイリの教訓は生かされなかった - 福島原発事故 海外での報道

2007年の記事ですけど、日本はかつては太陽光発電が世界トップだったという話。「強権的な政治意思を背景に原発エネルギー依存体制に針路をとってきたがゆえに、逆にエネルギー選択の多様性が狭められた」(内橋前掲書、2-3頁)。原発利権複合体が、自然エネルギーの開発を阻止しながら他方で「原発がないと困る」と人々を脅してきたわけです。原発依存体制をつくったくせをして自然エネルギー開発に難癖をつけてきたといってもいい。

asahi.com:市民も潤う太陽光発電 脱温暖化社会へ 欧州の挑戦・2 - 地球環境

要は生産過程に対して諸個人が社会的諸個人として民主主義によって理性的に管理することです。市場が自動的に安全を選択するわけではない。政府が安全を成長より重視するわけではない。資本の競争(とその媒介姿態としての国家)に委ねた発展から人間を目的とする人間による民主的発展へ。

原子力ロビー「電気事業連合会」の力と実態 電力会社幹部は3年間で5600万円を自民党政治団体に献金、「味方作り」を推し進めてきた | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

電力会社による政治の買収は民主主義の否定です。原発利権複合体は地域を破壊し、自然を破壊し、人間を破壊し、社会を破壊した。人体への破壊行為は民主主義への破壊行為に連結して起きてます。

追記:
今中哲治氏と飯田哲也氏の講演が札幌であるそうです。私は行けないんですが。はんかく祭!
by kamiyam_y | 2011-04-27 22:00 | 企業の力と労働する諸個人

労働者は痩せ細り、挽肉が肥え太る(補足)

昨日の投稿の補足資料です。

鉄道事故調査:鉄道事故調査報告書


世界の労働者階級のために抜粋してみました。

西日本旅客鉄道株式会社 福知山線塚口駅~尼崎駅間 列車脱線事故

2.5.5 健康状態等
 同社の平成12年から平成17年までの本件運転士の定期健康診断及び医学適性検査の記録には、特段の異常は見られない。

2.5.7.5 運転技量検査の結果
 本件運転士は、……運動技量審査を平成16年9月21日に受けており、合計点については、全受験者53名のうち上り列車で受験した27名の平均が560点のところ、566点(偏差値52)を得ていたが、ブレーキ操作について、平均79点のところ、74点(偏差値44)しか得ていなかった。

2.7.4.9 日勤教育に関する京橋電車区運転士Iの口述
 日勤教育に関して、京橋電車区運転士Iは、次のように口述している。

 日勤教育について、他の乗務員から見える場所で行われ、見せしめのようなことが多く、トイレに行くために席を離れるにも上司の許可が必要であるなど、非常にストレスを感じた。…以下略…

3.6.2 勤務状況等に関する解析
 勤務状況等に関しては、2.5.3 に記述した勤務状況及び2.5.4.1 に記述した本件運転士の事故前1週間の行動等の状況に、本事故の要因となるような状況は認められない。

3.6.3.1 日勤教育
 …前略…
 このため、同社は、一部の運転士にペナルティであると受け取られている日勤教育について、実施日数、実施方法、内容等を見直して、精神論的な教育に偏らず、再教育にふさわしい事故防止に効果的なものとするべきである。

3.6.3.2 運転技術にかんする教育
 …前略…、日勤教育において、……ブレーキ操作等に関する項目は見られないなど、京橋電車区においては実践的な運転技術の教育が不十分であったものと考えられる。

3.14.2 同社の運転士管理方法の本事故への関与に関する解析
 …前略…、インシデント等を報告した運転士にペナルティであると受け取られていることのある日勤教育又は懲戒処分等を行い、その報告を怠った運転士にはより厳しい日勤教育又は懲戒処分等を行うという同社の運転士管理方法が関与した可能性が考えられる。

by kamiyam_y | 2007-06-29 19:55 | 民主主義と日本社会 | Trackback | Comments(0)

労働者は痩せ細り、挽肉が肥え太る

原材料が機械を通りぬけて生産物になったら、たいてい重さが減るのがふつう。単純な生産物でしたらね。綿が糸という使用価値にかわるときには屑が出る。ところが、ミートホープ社のばあいは、原料の肉よりも、機械から出てきた挽肉の重量の方が大きかった。

きっと原材料さんが従業員の労働を吸いすぎたため、物理的な量まで増えちゃったんでしょう。

この文字通りの水増し騒動の背景にある圧力は、均質な空間ではない現代。私的生産が社会的生産だというねじれたありようといってもいい。労働が脱社会的な点として行われるため、労働の社会的なつながりが、人間のあずかりしらぬ価値増殖が支配する物の関係になっている。と同時に、労働の連関が人間たちが知っている社会的関係として生みだされている。

しかしこの点を踏まえなくても、人間たちが知っている常識として、私企業に社会的生産が実現しています。

私的事業体の内部が社会から完全に隔離されているように思いこむことは、いまや時代錯誤です。

営利法人の内部がメディアや監督省庁といった公共的な組織に連続しているのはあきらか。私的組織の内部が社会的生産過程の分肢として公共的だから、連続しています。ですから、この分肢を私的財産として囲っている私企業が、よい生産物をウソいつわりなくつくれ、という社会的労働の命令を聞かないふりをしたところで、いいかえれば労働現場の社会的責任を放棄したところで、社会的連関は拡がっており、内部の労働者はすでに労働現場の社会的責任を知っているのです。

だから、彼らは内部告発をする。公益通報をする。これは別に、個々の労働者が社長をきらっていたから腹いせにしたといった個々の動機以前に、彼らが生産組織の社会的責任を知っているからです。生産の社会的性格が社会的責任として認知され、社会的な利益のために内部告発をする能力が労働者に認められているからです。内部告発しか企業不祥事を社会に公開するキッカケがないというのも制約されたありかたではありますが。

最近このミート社の労働者も労働組合を結成しました。

<食肉偽装>ミート社従業員ら、労働組合を結成 | エキサイトニュース

労働組合結成といえば、グッドウィルによって搾取されている派遣労働者ですね。

<グッドウィル>「データ装備費」徴収も保険金支払わず | エキサイトニュース

ピンハネという搾取を告発され、どうやら返還させられることに。

Yahoo!ニュース - 時事通信 - グッドウィル、「データ装備費」返還へ=派遣スタッフから徴収、最大37億円

しかしです。ミクスィ(mixiミクシー)のコミュニティ

[mixi] グッドウィル・ユニオン

を見ると、返還は2年分にすぎず、しかもこの「データ装備費」というのは、「物損があったときの保険料」という名目だったが、《実際には保険料として使われておらず、会社が騙し取っていた不当利得》なのだ、と。

ピンハネといっても不当利得といっても同じ、あらわな泥棒、あらわな搾取ですが、何とも意地汚い搾取ですね。

労働力の売買、労働力の使い方(労働のさせかた、搾取のしかた)をめぐる労使の対立は、人件費削減、労働法制空洞化、格差社会の現在、とてもハッキリしてきたというべきか、総合労働相談コーナーの総合労働相談件数も増大。

厚生労働省:平成18年度個別労働紛争解決制度施行状況

昨年度は94万6012件。労働者の利害が個々の資本と敵対し、労働者の権利意識が昂揚してきたのかな。面白いです。

もう1つ、労働における尊厳を理解することを求めるニュースに触れておきます。触れておくだけですが。

国交省の事故調査委員会の報告書案です。18日の朝日で紹介されてました。

asahi.com:朝日新聞の速報ニュースサイト
関西>ニュース>asahi.com:運転士、日勤教育恐れ、無線に聴き入る? JR脱線事故 - 関西

報告書の「日勤教育」批判が紹介されてます。この事故によって「日勤教育」は世に知られることになったわけですが(さしあたり事故当時の記事→asahi.com: JR西日本の労務管理、刑事責任追及へ 兵庫県警-尼崎・列車脱線事故)、報告書における分析も「日勤教育」の恐怖を事故の背景として指摘しているようです。路線の設計など技術的なシステム、ハードの問題もありますし、運転手の個人的ミスに左右されないような機械装置の発展なども考慮されるべきでしょうから、むろんこの痛ましい事故の原因がこの点だけに求められるべきではないこというまでもなく、報告書はほかの要因も論じています。

この記事の内容からすると、運転手は、直前の駅でオーバーランしてしまった。そこで、彼は、このミスのせいで「日勤教育」を受けることになったらどうしようと不安になり、車掌と輸送指令の交信に気をとられた、あるいは言訳を考えていた。このような可能性がある、という分析結果のようです。

「日勤教育」なるものがもしも単なる懲罰にすぎないものであるとしたら、一般的な言い方になりますが、責任ある安全な事業運営の前提の1つとして考えられるべきことは、脅しと恐怖によって労働家畜を調教することではなく、労働組織がそこで働く人間の人間としての尊厳を承認し、労働する現場で人間が成長する権利を保障する具体的で合理的な教育システムをつくりだすことです。

触れる余裕はありませんが、同日朝日の「過労 崩れる30代」も深刻な記事。月200時間の残業で意識不明の重体になってしまった若者の家族を取材してます。

追記6/29
補足
by kamiyam_y | 2007-06-28 23:58 | 企業の力と労働する諸個人 | Trackback | Comments(0)

北海道の賃金不払 成長の原資は不払い労働にある

更新滞ってすみません。毎日訪問してくれてる人を想定して書こうと思うのですが (^^;)。

▽▽▽

マル激トーク・オン・ディマンドで、国民投票法案がとりあげられてました(第325回)。

http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_325_pre.asx

▽▽▽

 北海道の賃金不払

何度も言うように、泥棒です。盗んだ物を返しておしまいということでいいのでしょうかね。

昨年度の北海道で、所定外労働の割増賃金を不払いにした労基法違反に対して、是正指導を労基署が行った結果、100万円以上の支払いを命じられた企業が、総額8億6千万円、91企業あったのだと。

北海道労働局 記者発表北海道内における賃金不払残業の監督指導結果について

是正指導でおしまいか、という点はさておき、割増賃金を取り戻した労働者は5863人。244万4千人の雇用者数(2002年就業構造基本調査)からすれば、微々たるものじゃないでしょうか。どうみたってこの不払いは氷山の一角でしょ。

もう1つ興味深いのは、100万円以上の是正支払事案も、1000万円以上のそれも、17年度、18年度と飛躍的に増えている点です。

北海道労働局は、18年度の増大について、「景気低迷や競争激化に伴うコスト増加を人件費削減で補おうとする企業が増加したこと、及び、賃金不払残業を許さないという労働者の意識の高まりにより、労働基準監督署に対して企業の監督指導を求めて情報を提供する機会が増えたこと等」を理由としてあげています。

成長の原資は不払い労働にある

不払いが急に増えたというよりも、後者の告発増の方が要因としては大きいと思いますが、これは労働者の当然の権利です。権利からして、搾取は誰の目にも明らか。

権利は矛盾を映し出すカメラであり、労働者の発展を促す武器というべきですね。

損得からいっても、労働者平均15万円は大きい。

あからさまな、つまり法律上も搾取でしかないようなこういう不払いが生じるのも、個々の企業にとって、労働力に対して少なく支払い、労働時間を延長して労働の産物を多く得ようとする衝動が、競争のなかで外部からくる圧力として強制されるからです。

法律上正当な賃金であったとしても、経済の実態としては労働者は必ず自分の取り分以上のものを産出しているのあって、この実態があるからこそ、賃金不払い残業という病理が蔓延するのです。

この実態は、古代の奴隷と比べるとわかります。

土地・道具・原材料など労働に必要な物はすべて主人がもっています。奴隷は、これらをもとにして、奴隷は自分たちが消費する物をつくりだします。それに加えて、奴隷は、主人の分をもつくりだします。

奴隷という労働者は、自分たちの労働能力を維持するための生産物をつくりだし、いいかえると、自分たちが直接消費する生産物をつくりだし、さらにそれを超えて、自分たちが個別に消費しない剰余生産物をつくりだす、というわけです。

資本主義では、労働者が自分たちが消費する生産物よりも多くを生みだしているというこの点は、あいまいになります。貨幣の支配が介在するためです。貨幣が支配することは、労働者が土地やら主人やらと結びついていなくてもよいことであり、労働者が法律上独立していることです。つまり、法律上は搾取はいけません。貨幣の支配は建前として搾取はないというお約束をつくります。このお約束を破る理論はだから一部の人にとってはとても不愉快です。しかし理論は現実の絵ですから、このお約束は現実にも破綻します。

また貨幣の支配は、いったん生産物を企業の生産物として売り、それを貨幣に変えるという流れをとりますから、労働者は自分の働いた分だけを賃金と等価交換しているようにみえます。しかしこの見せかけも破綻します。

労働者の外部で自立しているかのような「利潤」「成長」なるものは、じつは労働者の労働の産物であることが露呈するのです。成長のための人間は、人間のための成長というその中身を実現することによって廃棄されなくてはなりません。

賃金不払現象は、成長が無償の労働による贈り物だいう点も明らかにします。というのは、利潤は企業の拡大と経済の成長に使われますから、賃金不払いによる利潤追求は、まさに成長のための成長を支える成長の原資が労働者たちの無償の労働にある点を公開するのだからです。しかも個々の労働者の孤立した労働ではなく結合した労働が成長の元手なのです。成長は労働者たちの共同の産物です。

成長はみんなのものです。しかしそれがみんなのものになっていない。ミート社の牛挽肉偽装も同じですよね。社会的生産過程の一部なのに私有の内部に隠されていることが問題の大前提なのでした。

前資本主義の生産を規定する経済法則は、生産物を個々の具体的欲求を満たすために消費することです。これに対して、資本主義に息を吹き込む経済法則は、価値増殖のための生産です。貨幣のための貨幣の増大にとらわれた生産として、資本主義という時代は、無償の剰余労働を飛躍的に拡大します。この働きのなかに資本主義の意味もあります。

賃金不払というあからさまな搾取が蔓延するには、それを推進する経済法則が存在しているのであり、この長時間労働への圧力も、「市場原理主義」が自然環境や、人権や、民主主義と衝突するという現代の限界問題の1つとして考えること。それが、現代の全体像をつかむことにつながるんじゃないでしょうか。
by kamiyam_y | 2007-06-25 19:20 | 民主主義と日本社会 | Trackback | Comments(2)