さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

国民投票法案の狡猾さ(階級的性格とも、反憲法的性格ともいう)

憲法は古い、改憲手続を、という話では全くないのです。「国民投票法案」は単に純粋に技術的に手続を決める法を装っていますが、その本質はきわめて反憲法的です。近代の理念を空洞化するような全体主義なものへの揺れは、安倍政権がこの法案を使って行おうとしている憲法改悪だけではなく、この一見技術的な法案にも現れています。

〈近代〉の憲法は、主権在民を実現し、基本的人権を守るために、国の力に縛りをかける体制を意味します。個人の自由な表現、公開された権力批判は、憲法の原点です。この原点に立ち返ってみると、「国民投票法案」の狡猾な性格を露わになります。

何といっても、この法案の反憲法的といえる性格は、公開された自由な議論を封じ込めようとする志向にあるのではないでしょうか。なぜ憲法改正にだけは、公務員・教育者等の「地位利用」禁止と違反者に対する行政処分などというものが設けられるのか。ねらいは、改憲案に反対する研究者やジャーナリストから表現の自由を奪うことにあるのでしょう。もちろん、改憲案に対する憲法学者の見解に対して市民がアクセスする知る権利も制限されます。

「地位利用」が公務員の中立性という理窟によって、批判的な個人の表現の自由への制限をねらっていることは、他方で、政治家や企業といった権力による表現の自由に対して野放しであることをみるとハッキリします。改憲案には「広報協議会」という形で、マスコミを使った自由な宣伝活動が保障されるようじゃないですか。与党改憲派の意見をメディアが宣伝しても、メディアという「地位利用」、与党という「地位利用」にはならず、憲法の解説を授業でしたら行政処分される可能性もあるという不思議なアンバランス。「地位利用」は、教育基本法改悪が、教育を国民に対して直接を責任を負うものから、国家によって介入されるものへと方向を変えたことに照応してます。

研究者が憲法について発言したら、「弁士中止!」という声が飛んでくることはないでしょうが、処分対象となるのかもしれません。ま、気に入らない人を冤罪に陥れるのも可能です。

単純化すると、学術と教育の場における批判的な知識を封じ、政治権力や貨幣の権力を自分のものにしたと思っている者が行う世論誘導は推奨される。憲法の原点と正反対です。企業や富裕層がいわば金に物をいわせて自分たちに都合のよい改憲を実現させても「民間」だからと許されることになります(何と抽象的な「民間」だ!)。

改憲をカネで買うための法案だということ、人民に公開的な議論をさせないということがこの法案の隠れた目的。これは、発議からたったの60日で投票、という強行スケジュールの押しつけにも明らか。

最低投票率の規定すらありません。日弁連 - 与党と民主党が国会に提出した憲法改正国民投票法案に意義あり!!Vol.2に書かれているように、有権者の二割の賛成で改憲という危険性もあるのです。

今生活する者の多くが望んでいることは、人間らしい豊かな老後の実現であり、働きすぎの解消であり、格差の解消でしょう。そうした問題よりも、自分のきてれつなイデオロギーに忠実になろうとしている総理の感覚は唾棄されるべきものです。

参照:
情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士 陸、陽菜、君たちは憲法制定権力を手放すのか~憲法改正国民投票法案阻止へ立ち上がれ!
情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士 憲法改正国民投票法案アップ【重要な追記あり】
by kamiyam_y | 2007-03-22 20:26 | 民主主義と日本社会 | Trackback
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