さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

貨幣の権力をめぐる2つの方向

日本の多重債務問題と、今回のノーベル平和賞とは鮮やかな対照をなしていますね。

MSN毎日インタラクティブ「広がる多重債務」(ここここ)。
平和賞は、東京新聞北海道新聞 バックナンバーasahi.com:ノーベル平和賞のユヌス氏、出発点は74年の大飢饉

多重債務による自殺は、追いつめられた果ての悲劇であり、社会関係の束が人の自由と権利を奪っていく人間疎外の局限です。

サラ金が債務者に生命保険をかけていることが問題となりましたが、人の命よりもカネ、という経済法則の無慈悲な実態が、露出してます。サラ金で働く者が他人の死を自分たちの利益だと感じるのも、貨幣の力による人間性の転倒そのものです。

現代社会は、共同体を破壊し、個人の孤立を招きますが、それは、社会が利己的諸利害に分解することです。この諸利害の相互反撥が共同的な絆を外的な権力として形成します。現代社会は、個人の形式的自由の裏側で、社会関係を貨幣の権力として凝集しています。

表では、人間が物を支配するが、裏では、貨幣として表象される物が人間を支配しています。共同的な紐帯が物の形をとって社会的な力として効力を持っています。これが現代社会の分裂したありかたです。物とは過去の労働の産物ですから、過去の労働が貨幣の権力として人々を支配している、ともいえます。

人々の意思が社会をまとめる効力を有するのではなく、社会をまとめる力は、労働の関連です。この労働の連関が貨幣として作用します。貨幣とは流通するだけではなく、流通の外で労働を吸収して増殖することによって、存在します。貨幣とは、過程において維持される独立化した過去の労働、つまり資本ですから、資本主義とは表では人間が自由だが、裏では資本が支配している矛盾した社会です。

ノーベル平和賞のユヌスさんは、経済学の机上の論理に疑問をもって、貧困の現実と闘うべく虐げられ権利を奪われた人々のために「グラミン(農民)」銀行を設立します。私は詳しくはないので、自信をもって言えませんけど、「人間開発」(国連)のための智慧の1つとして面白いかも。

こちらはその意図としては、貨幣の権力に支配されるのではなく、市場的な装置を貧困削減という公共的な目的に利用することです。貨幣(市場)を前提しながらも、その支配を転倒することを潜在的に含んでいるのかもしれません。貨幣をその制御されざる作用(大衆を犠牲にした成長)として実現する現代の限界に対して、市場を制御し市場の公共的機能を追求するという契機を含むことで、異議申立を行っている、と言っていいように思います。これで解決というわけではないけれど、「成長主義」を超える社会意識の形成がすすんでいる証拠でしょう。

まあとりあえず、日本の消費者金融の金利を下げるとよくないぞ、という脅し文句に対しては、低金利少額融資のグラミン銀行の手法が実地に反論しているか、と(笑)。
by kamiyam_y | 2006-10-18 22:09 | Trackback | Comments(0)
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