さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

会社法

寿司屋でテレビを見ると早実の投手が好きな食べ物だとか、どうでもいいこと放送してました。板さんが「やっぱり全国放送は早実中心だねえ」と笑ってました。

テレビでは早実の監督がインタビューに答えて、スター扱いしないでほしい、という趣旨のことを語ってましたが、そのとおり。ふつうの高校生なのですから、騒ぎ立てるのは、選手としても人間としても成長を妨げることこそあれ、促すことはないはずです。私もこれからハンカチで汗拭こうかな。


会社法

「会社法」という新しい法律が5月から施行されている(会社法)。

99年以降改正を重ねてきた商法から会社の部分を取りだして、他の関連している法律と統合している。企業システムの法形態の変革は、日本だけではなく世界的な流れである。資本市場の国際化と大競争を背景にしているとすれば、会社法もグローバル資本主義のとる1つの顔といってよい。

解説として神田秀樹『会社法入門』(岩波書店、2006年)を読んでみたが、基本的に、この法律の役割として、2つ確認できそうである。1つは、大規模会社の「所有と経営」の分離を進め、監査役や会計監査人をおいて経営に対するチェックを機能させること(62頁)、もう1つは、企業の法的分割・吸収を促進すること、である。

同書は商法改正の歴史をまとめるさいに「ファイナンス」「ガバナンス」「リオーガニゼーション」という3つの分野を示している。『資本論』の言葉から位置づけなおすと、「ファイナンス」はmonied capitalの問題、「ガバナンス」は個別資本の形態としての所有と機能の分離、「リオーガニゼーション」は資本の集中の問題となろうか。

面白いのは同書が「ガバナンス分野は『難解』と言いたい」(26頁)と述べていることだ。同書はこの分野が規制の強化や緩和という言葉ではつかみれず、「不祥事防止」「コンプライアンス」の議論と競争力の議論が混在しているという。

「ファイナンス」と「リオーガニゼーション」が株主や債権者の関係、会社どうしの関係だとすれば、「コーポレート・ガバナンス」は個別資本の「統治形態」である。《経営者権力》として現れる関係をどう制御するのかという古くて新しい問題を、資本としての現代社会はこの場面で提起し続けている。

「所有と経営の分離」は、所有者を社会的生産過程からますます遠ざけることを意味する。あらゆる労働は労働であるかぎり、すべて労働者が行いうる。株式会社はこの所有と労働の分離を制度化している。今回の新法で「機関設計」に監査役設置会社などいくつかのパターンが認められたが、株主総会と取締役は基本の骨組みになっている(同書第2章参照)。多くの株主が存在しつつ、一定の会議体・自然人の意思や行為を、会社の意思や行為として社会的に妥当させるために「機関」を設置する(51頁)。ここでの自然人は生産手段の持主である必要はない(雇われ社長)。

所有は現実の会社では経営を規制できない。経営は社会的労働の生産力を体現した力であり、しかも物象的で制御されない力を体現している。経営の暴走は私的所有者から独立した生産の社会的関係の運動である。ガバナンス問題は資本家から資本が独立した力になっていることを意味している。労働力の私的所有者(労働者)に対して資本が企業として対立しているだけではなく、貨幣の所有者たちと資本が対立している。

サラリーマンにとっては会社といえば「労働法」で、「会社法」はなじみがない(同書1頁参照)。それはそうなのだ。賃金労働者は、労働力の売り手であり、会社は買い手だ。買い手の側がどんな組織をつくろうと労働者にとっては、それは貨幣の所有者の側の話である。サラリーマンの社会的労働の産物が「他人の富」であることにはかわりない。

しかし、この「他人の富」が企業不祥事として現象するなら、それはサラリーマンをも不労所得者をもふくんだ社会の個人全体に対して、社会的生産過程が対立的なものとして現れているのだ。会社は社会的労働の産物なのに私的所有として立てられるという矛盾が会社法の改正を招く。

佐藤卓己『メディア社会』(岩波書店、2006年)」で、メディアの世論製造による公共圏の没落という文脈で「再封建化」という言葉が用いられており(191頁)、私は、マルクスが人格的支配関係を脱した物象的依存関係の時代(資本主義)は、自由な法的人格の関係をたてるだけではなく、再びそれを支配関係に転換すると述べたのを思い出した。

株式会社は自由な人々がつくるけれども、その展開は、生産内部の「再封建化」といってもいい。会社法の改正はこの再封建化の内部までは届かない。
by kamiyam_y | 2006-08-22 23:34 | 現代グローバリゼーション | Trackback | Comments(0)
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