さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

自己責任論は寄生虫による搾取を正当化するイデオロギー

ホリエモン捜査を検察が耐震偽装問題と無関係に以前から準備していようとも、その演出の効果が、安倍晋三を始めとする政界とヒューザーとの癒着疑惑を消し去ろうとする方向を秘めていたことはもはや言うまでもないというべきだし、検察のための劇場を準備したマスコミの権力指向もハッキリしている。

このライブドア・スキャンダルは証券市場自体を管理する社会の能力、危機管理システムを鍛える要因の1つにはなりうるでしょう。証券取引等監視委員会が何を監視していたんだか、疑問ですが、なにがしかの学習や、システムの改善はなされるとみておきましょう。

しかも、ライブドアの経済的規模など所詮泡のようなものです。

そうだとすればです。誰がどう見たって、私たちの生命と、政治とに直結して重大な問題は、やっぱり、耐震偽装の方です。

といっておきながら、今回は、小泉的イデオロギーの欺瞞性を暴露する事態としてライブドア問題を取り上げてみたい気分なのです。

単なる一過性の不祥事としてではなく、「改革」に内在する反福利、反人権的な要因をさらけだす事態として、取り上げるわけですが、この場合本当は、「改革」ではなく、「改革」という資本主義の姿が問題であり、欺瞞性は資本主義システムに内在する欺瞞性の小泉的形態というべきなのではないか。

そうも考えるのですが、ここでは深入りせず、

「『努力したものが報われる社会を』と叫び続けた怪しげな政治スローガンの真意が、実は一攫千金の成金や富裕層優遇を正当化するレトリックに過ぎなかった」

と内橋克人が書いている(「錬金術を政治が後押し」『朝日新聞』1/21朝13頁)のに「インスパイア」され、真似してみました。

「『努力したものが報われる社会を』と日本が怠け者天国であるかのように叫ぶスローガンが、金融賭博師を優遇するためのレトリックに過ぎなかった」

「『努力したものが報われる社会を』と成果給賃金を推し進めた企業の真意が、実は人件費削減を推し進めるためのレトリックに過ぎなかった」

「『民でできることは民で』という単純で幼稚な合言葉の真意が、実は天下り官僚の勢力拡大と民業圧迫を推し進めるレトリックに過ぎなかった」

とか、

「『自己責任だから本人が悪い』というレトリックが、政治の責任を覆いかくして個人を攻撃する材料となり、政治批判を封殺する野蛮な集団主義に用いられるだけではなく、長時間労働も、通勤地獄も、自殺大国化も、社会的貧困もすべて個人のせいにし、社会問題の解決を阻止するためのレトリックに過ぎなかった」

「『政府に頼らず自己責任で』という大人を幼児扱いするスローガンの真意が、貧困を個人の責任にして、不労所得(他人の剰余労働の収奪)も個人の努力の結果として美化するレトリックに過ぎなかった」

とか、いくらでも思いつきます。

人間の社会的つながりを無視した「個人」の想定は、他方で個人を抑圧する粗野な「集団」主義にたやすく転換します。というより、自己責任論という無内容な個人主義は、全体主義(ファシズム)の顔なのではないか。

この点考える余裕はないので結論。

寄生虫の腹がふくれるのは寄生虫の努力のおかげだ。寄生虫でない勤労大衆が貧しいのは、彼が寄生虫としての努力と才能がないからだ。自己責任論が語るのはこうした馬鹿げた話です。

ホリエモンの富が、架空のものを動かすことで引き出した他人の労働であること。架空の資本によって貯め込んだ、社会的労働の剰余にすぎないこと。ホリエモンがただの賭け事で、働かずして金を手にしていること。このことに誰もが気づいた。偶然的一事件が、成長し拡張する資本主義の強さとその肯定的契機(労働発展)に内在する欺瞞性を白日の下に晒したといっていい。資本主義の闇雲な成長が、他人の労働の吸収であり、資本主義の原理が資本主義の本質的な限界だということを、私たちはこのスキャンダルの中にかいま見ることができるわけです。私たち自身の社会的労働をどう制御するのか。ここに問題は集約されます。
by kamiyam_y | 2006-01-26 03:43 | 民主主義と日本社会 | Trackback(2) | Comments(0)
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