さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

剰余価値と剰余価値率の数値例【社会経済学の基礎用語】

数値を穴埋めする練習問題をつくってみました。1つの資本がここでは資本の代表であり、資本主義社会の本質を理解するための場面設定です。労働力という商品の使用価値と価値、労働力と労働の違いを踏まえて、1日の労働時間(1労働日)の労働が剰余価値を生みだすことをつかむことができればOK。

---練習問題-------

以下では、平均的な1資本を対象とし、価値通りの売買、流通の正常な進行を想定している。

  1.1人の労働者とその子が標準的に1日に消費する必須生活手段が12000円である。つまり、労働力価値は12000円。
  2.綿糸工場の1日。1日の生産物は8トンの綿糸である。
     ア.労働者50人を雇う。したがって、資本家が用意する総賃金額=可変資本価値額は、( ① )万円。
     イ.この50人の労働者に、1日に、9時間働かせる。
     ウ.この9時間で労働者に適切な量で消費させる生産手段は以下の通り。
       a.原材料8.1トンの綿(加工時に0.1トンが屑)―130万円。
       b.燃料などの石炭・ガス・油各適量―22万円。
       c.6000個の紡錘―計3000万円で100日で消耗・買換え。
          1日に生産物に移転・保存される価値は、( ② )万円。
       d.1棟の建物―10億円で、耐用年数10000日。
          1日に生産物に移転・保存される価値は、( ③ )万円。
 3.1日に生産される生産物8トンの綿糸は、300万円の価値を含む。
 4.1日あたりの投下額( ④ )万円の資本が、1日に( ⑤ )万円の剰余価値を生み出している。
 5.この300万円の8㌧の糸という形での資本(商品資本)価値、生産物価値の中身を、記号を用いて示すと、次の通り(単位は万円)。
   ( ⑥ )+( ⑦ )+( ⑧ )
  資本家は、資本全体が剰余価値を生みだしたと考え、(⑨)÷((⑩)+(⑪))=( ⑫ )%(小数点切り捨て)、という計算をする。真の資本の増殖率であるm'をわれわれは求めよう。それは( ⑬ )%である。
6.8㌧の綿糸に価値の成分を比例配分表示すると、cは( ⑭ )㌧の、vは( ⑮ )㌧の、mは( ⑯ )㌧の綿糸にそれぞれ示される。
 7.1日の労働時間のうち、必須労働時間Lnは( ⑰ )時間、剰余労働時間Lmは( ⑱ )時間である。労働者1人の労働1時間が生みだす価値は、( ⑲ )円である。

---解答------
①60 ②30 ③10 ④252 ⑤48 ⑥192c ⑦60v ⑧48m ⑨48 ⑩192 ⑪60 ⑫ 19  ⑬80 ⑭5.12(8×192/300) ⑮1.6 ⑯1.28 ⑰5 (x+0.8x=9) ⑱4 ⑲2400 (12000÷5)

---解説------
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労働者の個人的消費は、必須生活手段の消費です。それは、本人と子供の分、技能/熟練のための修行に要する分を含みます。この消費が、労働力の再生産であり、労働力価値を規定するのは、必須生活手段価値です。労働者の私的生活は、客観的には社会的労働の要素であり、社会的労働力の再生産を担っている。労働力再生産には、必須生活手段の生産のための社会的必要労働時間である必須労働時間が不可欠。労働者は、働ける状態になった労働力を、1日ごとに時間決めで売ります。労働者は明日も自由に労働力の売手なので、あくまでも時間決めで消費させるというしかたで売ります。日常意識=物神崇拝にもとづき、契約=法では、1日の労働に対して対価が払われると人々は了解し、合法的に交換がなされます。剰余価値は、その露出は賃金不払残業のように違法であったりするわけですが、ここでは、合法的に過程を通りぬけ、経済法則として剰余価値が生産されることを理解するのが肝要。

消費は買手の権利であり、この消費で労働力の使用価値、つまり1日の労働が実現します。売買後のリンゴを食べる権利が八百屋にではなく、買った人にあるのと同じで、1日の労働は、生産手段とともに買手のものであり、その成果も買手の私有に属します。労働力は生産過程では労働という状態であり、労働力は価値として消滅しますが、使用価値の実現として価値を新たに生みだす。これが労働力価値の等価と剰余価値です。

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貨幣所持者であった資本家が生産過程の前提として買っているのは、用具などの労働手段と原料などの労働対象、そして労働力です。生産過程では、労働は具体的有用的労働として生産手段を別の使用価値である生産物に変えますが、このことによって生産手段価値は保存されます。価値そのものは手を加えられることなくただ移転保存されるだけ。価値という社会的交換能力は社会的な存在であり、これが生きているわけです(ちなみに労働価値論を物神崇拝のように言う人がいますが、そういう人こそが物神崇拝の産物なのです)。労働手段は、素材的には全体として生産過程に関わりながら、価値としては部分的に生産物から貨幣へと形を変えていきます。労働対象は現物形態ではゴミになる部分もありますが、価値としては全部移転。
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事物の結果だけを無媒介に受け取る私たちの実践的な意識は、資本全体が、あるいはかけた費用が利潤を生むと思い、費用と利潤を足すと価格になると考えます。価格は客観的に貫くもので勝手につけても売れないにもかかわらず。そして、この価格を超えてなんとかうまく特別な利潤をつけられないか、日々の資本家的行動は追求していくなかで、資本家の努力を利潤の発生の源と取り違える。

不変資本と可変資本の区別は、生産物価値形成における、価値増殖過程における本質的な違いです。次の図は、大谷禎之介『図解 社会経済学』(桜井書店)における図を利用して整理したものです(図の形などは厳密には同じではありません。またここでは色をつけています)。
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生産物糸の現物形態の量に生産物価値の成分を比例配分的に示すことができます。
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糸のどの部分をとってもc、v、mを比例的に示すことが可能です。また、全部正常に売れると想定してはいますが、実際上資本家はこれだけ売ればコストのこの分を回収できると計算するはず。ここから奇妙な弁護論が発生しました。あれですね、「シーニアの最後の1時間」。1日の労働時間に当てはめて、最後の1時間が利潤を生むという学説です。







by kamiyam_y | 2017-12-27 23:10 | 資本主義System(資本論)