さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

焦燥

500枚コピー用紙の封を引きちぎって開け、デジタル印刷機リソグラフの左側に用紙をセットして数値をピピっと入力するや必死に印刷、といってもスイッチ押して待つだけだけで必死なのは印刷機だけのはずだけれどこやつは配布の時間が迫っているというのに準備した用紙を飲み込む速度も右手に印刷済み用紙を吐き出す速度も異様に遅く、私は体が緊張でこわばる。

焦る気持ちを抑えつつようようにして終えた印刷、プリント500枚抱えて鍵束コーナーに寄るや職員Xが近づいてきて、窓から見下した建物を指しながら、

「あなたの行かれる部屋はあそこの1階、見えますよね、ねっ」

といやみたらしく説明され、(えっ、歩いたらまた5分かかるじゃん)と心中不満につぶやきながらも鍵を手にとり階段を下りつつ、(時間はすでに30分も過ぎているじゃんか。なんてこった。今日はもうみんな帰っている、そうにちがいない。いつも自分の身内の人には「時間を守れ」と繰り返してるのに、同じ刀で自分を斬りつけなきゃならないじゃないか)と焦燥倍増。

夕焼け空の稜線の向こうに太陽が沈みこむや、屈辱感を払拭するべく気分直しに入店したレストラン、私のテーブルのうえで、カカオの芳香を樽のかおりに混ぜて鼻の奥に運ぼうと待ち構えた気取った葡萄酒が、接客に来たウェイターによって大きめのリーデルグラスに注がれる。

すてきなボルドーじゃないですか、「これ持ってちょっと外に行ってきますね」、ウェイターは馴染みのスタッフ(だったけな)、「どうぞ、いいですよ」、さすが気が利く。私はワインを片手にホテルの自動ドアを飛び出して(なんて勝手な客なんだろう)、近辺の逍遙を始める。

夏の夜風は頬を冷やしつつ過ぎていき、散歩する私の微酔い気持ちよさが伝わるのか道行く人から「いいですねえ」などとにこやかな挨拶を受け愛想笑いを投げ返しながら彷徨う。

しばらくほっつき歩いていたら小高い場所につく。眼下には闇を飲み込む海を臨んで夜景が広がる。入り江に浮かぶ小さな島には橋がつながり、橋のこちら側にはネオンサインが集積して夜空に光を放ち、その一帯から点状に放射するイルミネーションを視線でたどっていくと、路地が複雑に入り組んでいるようだ。「あのごちゃごちゃした一角、明日の昼にぶらつこう」、仕事の前のひとときカメラをポケットに忍ばせ流浪するのだと私は明日の予定を想像しつつ波に浮遊するゴミのように漂泊を続ける。

突如グラスが岩のような、コンクリートのような何か堅いものにあたる音がした。

脚の下の台の部分に亀裂が入り三角に欠け落ちている。

かっこつけてワインを外に持っていったのはいいが、グラスの破損を見せるのは情けないことこの上なく、いたたまれない。どうするだべか。

惨めさに打ちのめされた私はホテルのような建物に侵入しトイレの個室に入る。和式だ。

しかも便器の周りに飛び跳ね溜った小便や嘔吐物が異臭を放ち私をますます落ちこませる。

(気持ち悪いないやだな)

しかたなくしゃがむと、浴衣の裾がその溜った小便に触れてしまった。

「うわ、汚ねぇ」。

汚れた液体が布に染みてくる。

というような夢を見ました。さらに続いて、AKB板谷友美がプチ激太りしたみたいな姿の、ちょい意地わるそうな眼差しに自信もってる小悪魔ぶった小娘(板谷友美が意地悪そうと言っているのではなく彼女はかわいらしい娘さんです)が布団に入りこんできたのでボディーちら見した瞬間天然Fカップロケット乳が気になったとはいえそんなことやらしてそれがばれていろんな人に嫌われたくもなくベッドから降りてカーペットに寝ざるを得なくなったとか、「72年のベッケンバウアーとネッツァー、82年のジーコと、ソクラテス・ファルカンだな、俺たち」なんて変な文句交えて女子と飲んでるようなよくわかんないですけどややエロ楽しき展開に反転したような気がするんですが、忘れちゃったのでここまでとします。

怖い夢ならもっと非日常的なものでもいいはずなのに、日常に潜む小さくちっぽけなショックやら違和感、よくある無残な思いをわざわざ反芻するような微妙に感触の悪い夢でした。《平凡な日常のなかにこそ真に見るべきものはある》という思想の反映と読みこめば幸せってもんかもしれんと自分を説得しようとしても中途半端にリアルな感覚には単純に真夏の寝苦しさの反映が見て取れるだけで、私の自我の足下に拡がる「無意識」界やら何やらそこにを発見するのはおそらく間違いでしょう。

爽やかな夢を見てから起床したい。入眠前に楽しいことを考えてみたことがありますけれども夢をコントロールするのは夢の定義に反してそうで、埴谷雄高が夢を制御する話は今の私には真似できないですね。
by kamiyam_y | 2011-08-24 23:50