さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

《子供の人権》《賃金労働者の人権》vs原発共同体(補足)

そもそも子供たちは原発事故がなければ被爆させられることなんてなかったのであって、言うまでもなく被爆させられること自体許してはならない。被爆を前提にして被爆限度を上げていくのは本末転倒でおかしな話というべきであり、東電の人災による責任を拡散することを助長します。良識ある主張は子供に放射線労働者なみの被曝基準を適用するのかと憤るのであり、われわれは子供に原発労働させるのかって言わねばなりません。被爆予防措置を最大限実施すべき。

福島第1原発事故:汚染「チェルノブイリ級」 矢ヶ崎琉大名誉教授が現地調査 /沖縄 - 毎日jp(毎日新聞)

わらが敷かれた田では4・8マイクロシーベルト毎時、わらを取り除いた地表は3・2マイクロシーベルト毎時だった。土を2センチ掘ると1・2マイクロシーベルト毎時まで下がった。


つねにこの例と同じになるわけではないでしょうが、掘ると放射線量の値が低くなります。

この矢ヶ崎克馬・琉球大名誉教授は「被ばく回避最優先に」と題して、今朝の『毎日新聞』で子供の「安全な学校教育や乳幼児らの保護急げ」と論じてました。この論説は、国際放射線御委員会(ICRP)基準設定の「背景」として、占領期に米国が台風の後の「データを悪用し」「原爆被災地」に「放射性降下物はなかった(すなわち内部被ばくはなかった)」として内部被曝を隠蔽したことをあげています。ヨーロッパ放射線リスク委員会(ECRR)が1945~1989年の放射線による死亡者数を試算したところ6500万人であったのに対して、ICRPの推計値は117万人。ICRPの試算には内部被爆が組み込まれていないからだと。

「『ICRP式算定方式』を事実より優先させる…姿勢が今回の深刻な『住民無視』対応の背後にある」「ICRPの限度値」は「住民の健康を第一に考えたものではない」。


ICRP基準が人民の安全を絶対的な基準にし被爆を回避する権利を最大限に最優先しているとは言えないようです。

ヨーロッパ放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Riskhttp://www.euradcom.org/2011/ecrr2010.pdf)のバズビー教授もICRPのリスクモデルを強烈に批判。

2011年3月19日 ECRRアドバイス・ノート ECRR リスクモデルと福島からの放射線 クリス・バスビー (欧州放射線リスク委員会)
放射線リスク欧州委員会(ECRR)のバズビー教授のインタビュー/PressTV - 薔薇、または陽だまりの猫

元のインタビューを載せたサイトですが、原発から立ちのぼる黒い煙に衝撃を受けます。

PressTV - 'Japan careless about radiation dangers'

ここで参考になるのは、2003年報告(2003 Recommendations of the European Committee on Radiation Risk)におけるECRRモデルの次の概要。

原子力安全問題ゼミ山内知也(ECRR2003翻訳委員会):ECRR2003報告における新しい低線量被曝評価の考え方

100 mSvよりも高い外部被曝の場合においては、現行の放射線安全モデルはおおむね正解であると言える。しかし、微視的な組織の中で非均一な被曝が起こる内部被曝における線量を評価するに際して、そのような平均化の手法を使うと大きな間違いおかしてしまう。(p.12)
• ICRPモデルによれば、セラフィールド核施設・再処理工場周辺における小児白血病発生群の原因は、放射能汚染ではありえない。被曝線量レベルが数百倍低いから。
• ECRRモデルでは、その数百倍を内部被曝のその形態における係数(生物学的損害荷重係数)として扱い、ICRP モデルでの線量にそれを掛け合わせた修正線量を利用する。
外部被曝についてはICRPモデルを基本的に容認。細胞線量の確立の必要性を主張する。
(p.15)


生物学的損害荷重係数によって修正した線量を用いるECRRモデルは、細胞レベルでの内部被爆評価を組み込んでICRPモデルを修正したってことでしょうか。

ICRPモデル:「冷戦の秘密主義と統制体制の時期にDNAが発見されるよりも以前に、生きた細胞の放射線に対する生物的応答のほとんどが知られていなかった時期に、主として軍当局に支援されていた物理学者達によってつくられたものである。」(第5章)(p.17 )


ICRPモデルは、軍の支援という政治的文脈のなかで物理学者が作成したもので、放射線に対する生きた細胞の反応が研究されていない頃のもの。生物学の発展を踏まえていない。ICRPモデルが冷戦崩壊以前的であるとすれば、ECRRモデルはチェルノブイリを経験した欧州の智慧であり、ポストチェルノブイリ的基準であると言えそうです。

何よりも一人一人の生きた個人こそがかけがえのない絶対的な世界であり、生きた個人一人一人の健康が何よりも重視されるべきでなのですから、人民の健康の問題なのですから、しかも安全性に不確実性が残る領域を対象としているのですから、より厳しい基準を採用すること、基準を厳しく適用することが原則であって、厳しい基準によって方向性を、政策を限定し、諸個人の智慧と社会的共感を集結し、力を集めてともに現状を打開していかねばなりません。政治や企業や経済なるものの都合ではなく、人権と理性にもとづいて政策の領域が選択され諸個人の行動が集結されねばなりません。

ドイツ放射線防護委員会も被爆による癌死亡率をICRPよりも高く計算しています。

「日本における放射線リスク最小化のための提言」(ドイツ放射線防護委員会) | ICBUWヒロシマ・オフィス
http://icbuw-hiroshima.org/wp-content/uploads/2011/04/322838a309529f3382702b3a6c5441a32.pdf

p.1-2を見ると、1kg あたり54000Bq のヨウ素131 が検出されるような菠薐草を0.1 ㎏摂取したばあいの甲状腺の器官線量は、乳児(1 歳未満)で20 mSv、幼児(1~2 歳未満)で19.4mSv、子ども(2~7 歳未満)11.3mSv、子ども(7~12 歳未満)5.4mSv、青少年(12~17 歳未満)3.7mSv、大人(17 歳以上)2.3mSv。年少者ほど影響を強く受けるのがハッキリしてますね。何よりも子供の保護が最大限になされねばなりません。半減期の長い、残存期間の長いセシウム137、セシウム134、ストロンチウム90、プルトニウム239に汚染された飲食物の摂取については低年齢層ほど影響が大きいとはなってませんが、やはり乳児において実効線量が高いです(p.2-3)。

子供たちの人権を、安全に生き教育を受ける子供たちの人権を最大限保障する体制の構築を私たちの民主主義社会は早急に実行すべきです。

最後に付け足し。岩波が『世界』2011年1月号の特集「原子力復興という危険な夢」から3本をサイトにpdf形式でアップしてます。コメントする余裕はありませんので紹介だけ。 岩波書店

後記(4/30):

放射線安全学の小佐古・東大大学院教授が29日に内閣官房参与を辞任しましたね(辞表は30日付)。

asahi.com(朝日新聞社):小佐古参与が抗議の辞意 子供の被曝基準「容認できぬ」 - 政治

〔略〕会見では特に、小学校などの校庭利用で文部科学省が採用した放射線の年間被曝(ひばく)量20ミリシーベルトという屋外活動制限基準を強く批判。「とんでもなく高い数値であり、容認したら私の学者生命は終わり。自分の子どもをそんな目に遭わせるのは絶対に嫌だ」と訴えた。「通常の放射線防護基準に近い年間1ミリシーベルトで運用すべきだ」とも述べた。

 また、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測が4月下旬までに2回しか公表されなかったことも批判。〔略〕


福島第1原発:内閣官房参与、抗議の辞任 - 毎日jp(毎日新聞)

〔略〕「…この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と主張した。〔略〕【吉永康朗】


学者の良心です。学問は人間が目的であり、非人間的な学問の適用は許されない。

東日本大震災:小佐古・内閣官房参与辞任 線量基準の決定過程批判 - 毎日jp(毎日新聞)

小佐古さんて、ICRPの委員も務めたことがあるとあります。ICRPの基準からしても子供に20mSvは酷すぎます。
by kamiyam_y | 2011-04-29 22:11 | 民主主義と日本社会