さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

サービス残業は、概念的にドロボーとおなじ

Excite エキサイト : 社会ニュース [ 03月24日 17時23分 ] 共同通信

サービス残業をさせ、割増賃金を払わなかった疑で、会社の幹部が労基法違反で書類送検という事件。

「サービス残業」なんて言い方、あたかも無報酬の奉仕活動みたいですね。
実態は賃金不払。だれもがわかる搾取・収奪のたぐいです。労働者が、いやいややってもよろこんでやっても、賃金泥棒にかわりありません。

厚労大臣がいったようにちゃんと「賃金不払残業」ってハッキリ言いましょう。

もし、ある日いっせいに「サービス残業」やーめた、と働く者がみんなやめたら機能停止になる会社ばかりではないのでしょうか。

これで会社が、取引先に納品できず、商品を供給できなくなったとしてもそれは「会社」の責任です。サラリーマンは単に労働力をレンタルしてるだけです。それを時間内で使えるかどうかは、会社の仕事なんですから。会社を代表する経営者の責任です。経営者の下で独自に行われる時間配分は、サラリーマン一般の責任ではない。
時間内で、買ってきた材料(労働力、原料、道具)をうまく組み合わせて、生産物をつくれるかどうかは、生産者である「会社」の仕事である。

「サービス残業」をやめて業務が滞るなら、責任は「経営」にある。

また、いっせいに「サービス残業」やめたら機能停止になる会社ばかりだとしたら、一体だれがこんな体制をつくりあげてきたのでしょうか(さらに、「だれ」という問題から一歩進んで考えるべきなのですけど)。

日本的な仕事習慣や雇用慣行は、私有財産制っぽくない。それはそれなりの美点もあれば、強さもあったといえましょう。
まったくもって、労働者がこの「サービス」をやめたら企業が崩壊するなら、企業はすべて労働者のものですね。

日本的な経営は、資本主義の日本における成熟において意味をもっていたわけですが、反面で賃金不払残業という泥棒を、負の遺産として蔓延させてしまったこともたしかです。

賃金不払残業……は、労働基準法に違反する、あってはならないものである。……
 しかしながら、現状をみると、未だ労働時間の把握に係る自己申告制……の不適正な運用など使用者が適正に労働時間を管理していないことを原因とする割増賃金の不払いなどの状況もみられるところである。(厚労省「賃金不払残業総合対策要綱 」2003.5.23)


労働時間の長時間化傾向も、地域によってちがった現れ方をする

日本的経営の特徴として、いろんな場所でいろんな作業を従業員にやらせてみるというのがあります。これはこれでいい面もあるわけですが、どこの部署に行っても、特定技術系以外はみんな素人ばかり、っていう生産性の低さもあるような気がします。契約社会でないあいまいさはいい面もあるけれど、残業に関していえば、ヨーロッパとの違いは知っておいた方がいいと思います。

たとえば欧州ですと、労働者は他の労働者の職域に踏み込まない。電気工に、機械工の道具の片付けを命じると拒否されるという(藤本正『労働契約・就業規則・労働協約』学習の友社、36-37頁)。

ドイツでは労基署の抜き打ち検査もあり、労働時間を短くする工夫がされているという報告はたとえば、熊谷徹「ドイツの会社生活」NHKドイツ語会話 2003年1月号

労働者が私有財産制を武器に

労働者は、私有財産の持ち主としては、会社と対等です。会社に、労働力というモノを、時間決めで貸し出してるわけです。レンタルの条件は普通の人は守ります。CDだって、車だって、遅れたら延滞料金払うはず。壊したら弁償するはず。

労働力も同じです。洗濯機をレンタルで借りるとして、いっぺんに5キロまでしか洗濯してはいけないのに、毎日8キロ洗濯していて、標準耐久時間より早く壊したら、カネはたくさん払わなきゃならないでしょう。一日8時間使うと普通にもつ労働力を1日16時間使うのは不当です。

賃金不払残業は、どろぼうです。レンタル商品をただで使っているのですから。


賃金未払残業は、近代社会の根幹を否定している

封建社会ですと、土地は王様のもの。王様は家来に土地を保有させ、家来はその家来やら領主に保有させる。農民は、土地から移動できず、領主のための労働を行う。

これに対して、人々が法的に自由になった近代社会では、誰もが私有財産の持主。土地を売るのも自由。自由に自分たちの労働の成果を商品交換しあう。こんな近代社会の原像からすれば、泥棒こそは、個人間の契約という自由の承認を否定すること。賃金不払分業は、近代社会の根幹と対立する。

しかし、資本主義の重要な法則の一つが「長時間労働の法則」である。
いま勝手に名づけただけですけど、個々の資本家は、自分の買った労働力は長く使いたい。それが壊れたって、代わりは買ってくればいい。

これに対して、労働者は、労働力の売り手としてこれを正常に使わせる権利があります。

両者の力比べの決着は、共同体(社会の理性)の登場です。つまり、8時間労働法というような法律によって、搾取の自由を制限する、あるいは、生産過程を制御することになります。

この法律は個々の資本家や会社や経営者を縛ります。
これがないと、経営者が「ウチは競争上、ほかの会社よりたくさん働いてもらう、
それがおまえらのためだ」といった説教をたれる世界になってしまいます。

こうした全体的な規制があるために、個々の会社にとってはこれが守るべき競争条件になります。守らない会社は取り締まりの対象になります。

しかし、この規制が全体の規制になっていなければ、一部の経営者が守るだけとなって、
守らない経営者が得をすることになります。つまり、規制を守らせる体制が必要となります。


労働力を売り買いするときの契約

すごく単純化してみると、日本は個人間の契約より共同体的な雰囲気が根強く、労働力のレンタルもなんかあいまいかもしれません。
これに対して欧米は私有財産権をもっと強く意識している、あるいは契約社会で契約が明快だとしましょう。とすれば、労働力のレンタルの契約も、「時間」「使い道」はっきりしていることになります。

「時間」を厳格に守るなら、着替えも休息もこのレンタル時間に入っており、レンタル時間を越えたら、労働者はすぐに職場から出るはずです。机の上が片付いていなくても、ねじを締める途中でも、労働者は時間契約をまもり、午後5時に会社の門を出るのです。

これに対して日本だと、労働者は仕事と一体化しているというか、時間になっても職場にいたりします。労働者が自分の無能がいけないんだと、残業を自分のせいにして心を病んだり、家族のためであれ、デートであれ、プライベートを大事にする人が、職場共同体の集団主義から攻撃を受けたりするかもしれません。日本の場合、「時間」単位で労務提供しているというよりも、自分に与えられた「仕事」をぜんぶこなさなきゃ、という意識が強いと思われます。

労働力の「使い道」を守るとは、契約外の労働をしないことです。たとえば、フォークリフト操作の女性が女性だからとホステス業務やウェイトレス業務をしないということ(お茶くみしないということ)。あるいは、手が空いたからといって、ほかの職種の作業員の片付けの手伝いをしたりしないことです。

これは、労働者が自分の意思で労働するのではなく、あくまでも会社という私有財産の持ち主の意思によって仕事することでもあります。

もちろん、ほかの労働者の尊厳を守るということ、職域を侵さないということでもあります。

生産の全体の管理や、納品は組立工の仕事じゃありません。

これに対して、日本だと、上司の指示に従うだけの従業員はやる気がないなんていわれるかもしれません。経営的な労働も、経営的な労働用につくられた労働力を買ってきてさせるのではなく、従業員共同体のなかから選出された人がしたりします。ほかの職種をしていた素人さんが年功で管理労働をおこなったりします。

日本だと、残業に対して、割増賃金を払うどころか、
「仕事があるんだからよかっただろう」
とお仕着せがましく、店長がどんどん店員の労働時間を延ばしてしまうことすら
(別にどこぞのコンビニの話じゃないです)。

日本だと、あまりに残業が一般化しているうえに、共同体的な雰囲気で、自分だけ抜けられない、という残業を断りづらくなる心理が働くでしょうし。

ある観光バスの会社では、ガイドさんから、休日を買うそうです。労働法上どうかと思いますが、休日一日2万円だそうです。これに給与が別にでるらしく、運転手よりガイドのほうが給料がいいばあいもあるんだと。しかし、給与がいいってのは、たいていとてもハードか、なんらかのリスクが高い職種にかぎられるでしょう。

「所定内労働」でのまっとうな給与を地道に要求するしかないんです。

残業しないと生活できないのは、賃金が切り下げられて、残業をあわせた時間が
実質の労働時間になってしまっているからです。

仕事が楽しい、職場に忠誠心を感じる、自分の成長のためだ、といった理由で
長時間労働も苦にならない人もいます。
しかし、こういう事実が、「所定外労働」を正当化する根拠になるわけではありません。

私はカネのために働いているのではない、人が喜べばいいのだ。
こうかんがえて、あえてカネにならないところに自分の力を集中することもあるでしょう。
しかし、会社はまずさしあったてはカネのために働くところです。カネのためではないなどと主張するのは犯罪的に迷惑です。資本主義企業は、カネと労働力の交換によってなりたつ場です。

賃金不払残業を自らサラリーマンがすることは、盗みに協力することです。

そうではない、自分の自由な気持ちからしているのだ、会社のために。
こういう気持ちをもつ人もいましょうが、これは自分の労働を安売りしています。
自分の仕事に対する誇りと敬意を欠いてしまうことにもなりかねません。

全く当たり前の権利でさえ、主張するのがはばかられたり、
賃金不払残業を当たり前のように思ってしまう。こういう日本の現状に対して、

けっこう大学生ですとそこらへんは賃金不払残業はおかしい、許せないと言うのですが、
実際に日本的雇用慣行のなかにはまって生活に追われている人は、
現状を変えていく気力もないのかもしれません。ともかく生活の糧を得られればよしとなってしまうはず。残業を断りづらい環境のなかで断るのは勇気もいるかもしれません。もう少し挑発的な言い方をすると、仕事をこなして組織の犯罪にいったん目をつぶらせることでメンバーを抜けられないようにする、告発する勇気をにぶらせるのは、軍隊やヤクザだけでなく、普通の会社もそうなのかもしれませんよ。

これはサラリーマン個人の問題ではありません。個人の疎外の結果であるシステムをどうするかです。少なくとも、日本の労働組合も、企業も政府もそれぞれ責任があるでしょう。

しかし、ともかく、人間としての豊かさはやはり自由時間をもつことが条件です。

そのためには、労働者が、生産の材料や道具にたいして、自分たちのものにたいするかたちでかかわることが必要です。働く者は自分のものによって自分の意思で働くときやはり生き生きとする。しかし、小土地所有者の社会だったら、生産が発展しない。資本家の手で生産を集中して発展する。しかし、それは働く者にとっては疎外なんです。

ともかく自由時間は人間の豊かさの泉です。

仕事が自己表現や自己実現とぴったり重なっているのでないとしたら、仕事のせいで友人とすごすこともできず、自分のすきなこともできず、恋人とすごすこともできないんじゃ、何のために生きているんですか。
体をこわしてまでしなきゃいけない仕事がそんなにあるわけはなく、またそういう特別な能力の持ち主もそんなにいるわけじゃありません。
自分が必要とされているという幻想を得たいがために仕事にしがみつくとしたら、おばかさん、
悲しいですよ。

でも、労働者の自由意思が限定されいるのが資本主義です。労働者の立場は実質的に弱い。特にこんな不況でしたら、仕事にしがみつかねばならなくなる。

だからこそ、賃金労働者は、対等の権利を会社に対して主張し、それを支援できる政策的な道具(労働法や労基署など)を使う正当な権利を持っています。

また企業内組合ではなく、企業を超えた労働組合が、労基署と協力して、残業に対して抜き打ち立ち入り検査をする権限をもつといった方法も考えられます。組織擁護よりも、市民として内部告発をできるよう制度を充実させること、市民の法律教育も大切です。

余談。労働時間を短縮すれば、サマータイムなんて導入しなくても(したら労働時間延長になるだけ)、消費にまわす時間は一応増えるし、ワークシェアリングにもなりまっせ。週35時間の成熟した社会に比べ、週60時間以上の日本はほんとどれだけ世界に貢献しているんでしょう。貢献してないとしたら、どこかで無駄に消費されてるんでしょう、労働の産物が。
前近代的な就労形態といえば、学校の教師ですね。
ドイツみたいに、午前中は授業、午後は次の日の授業の準備、というのが正しいです。
事務作業は別の職種に任せるべき。
学校の外でも生徒の家庭に踏み込んでいくドラマに出てくる教師たちって、正しい労働者じゃありません。


労働者が私有財産を武器にすると労働者も規律を要求される

賃金不払残業を窃盗として拒否することは、労働者が私有財産権を武器にして自分の生活を豊かにすることです。権利主体としての正しい行為です。

そもそも残業は会社が労働者に例外としてお願いするもんです。

しかしこれは労働者自身を鍛えることにもなります。
だって、昼間はのんべんだらりとサボっていながら、夕方あたりから仕事を始めて、残業手当をたくさんもらう連中いるでしょうから。そういうやつらは、残業解消に抵抗するかもしれないです。権利を主張するのはけしからんとか言い出すかもしれません。

私有財産制を厳密に守るということは、会社を「男の風呂場」だなどと言っているサラリーマンを追い出すことでもあります。先ほどの「時間」でいえば、契約時間をすぎているのに、サラリーマンが机を使ったら、不当な使用ですし、他人の私有地内に居座っていることになります。

私有財産制を守るってことは、ちょっとややこしいことも招きます。パソコンとインターネットの普及は、サラリーマンに会社の備品をあたかも自分のものかのように感じさせるでしょう。知的労働者は遊びが好きです。仕事中の気分転換にネットで遊ぶでしょう。

ところが、私有財産権からすれば、社内メールの抜き打ち検査で50人クビ、という米国の会社でおきていることも、程度はどうであれ、ありえます。会社の備品の消しゴムを私用に使ったら窃盗です。会社のパソコンと通信網を、仕事と関係のないことにつかったら、ややきつい言い方をすると、やはり他人のカネを横領するのと同じ。会社のパソコンは会社のものというこの関係からしたら、社内メールのプライバシー保護より、不正使用ということになるよう。

ニューヨーク・タイムズ社:電子メールの不正使用で23人を解雇 | Wired News


厚生労働省のつぎの文書、いいですよ。賃金不払残業をやめさせる立派な正当性にもなります。

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賃金不払残業総合対策要綱について
(平成15年5月23日)
(基発第0523003号)
(各都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)

……

(別紙1)
賃金不払残業総合対策要綱
1 趣旨
賃金不払残業(所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること。以下同じ。)は、労働基準法に違反する、あってはならないものであり、その解消を図るために、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平成13年4月6日付け基発第339号。以下「労働時間適正把握基準」という。)を発出し、使用者に適正に労働時間を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を具体的に示したところであり、厚生労働省としても、その遵守徹底に努めてきたところである。
しかしながら、現状をみると、未だ労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用など使用者が適正に労働時間を管理していないことを原因とする割増賃金の不払いなどの状況もみられるところである。……
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堀忠雄『快適睡眠のすすめ』〈岩波新書〉岩波書店、2000年を読んでいたら、昼寝の有用性について考えさせられました。建築関係の職場では安全管理として昼寝がとりいれられているように、昼寝が仕事を全うするのに必要な場合もあるといいます。また、本書では、それから夜型も立派な体質だとあって、自信を回復しました。朝ほんと弱いんです。それもあって「サマータイム」導入反対です。

寝る間を惜しむことを賛美するのは、不合理な根性主義です。

万国の労働者よ、昼寝せよ。

あ、それから、人材派遣会社のバイトのことで質問してきた学生さん、もうしわけないんですが、法律も労組も、自分で調べられること自分で調べておいてくださいな。派遣は派遣会社と契約した労働条件で働きます。労組もあります。
by kamiyam_y | 2005-03-31 00:02 | 企業の力と労働する諸個人 | Trackback | Comments(0)
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