さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

金融グローバリゼーションと「サブプライム」危機(1)

現在の世界同時不況、ケインズが大恐慌時代に語ったことを思い出さずにはいられません(私は生まれてないですけど)。

「世界中を覆っている不況、世界中に充足されない欲望が溢れているのに失業が存在しているという最悪の異常事態」(『ケインズ全集9』宮崎義一訳・東洋経済新報社、388頁)。


充足されない欲望がありながら生産がなされないという不合理。

現代の大量失業においても、人々が、自由に労働することによって社会参加するという権利を実態において喪失していることにかわりはありません。人権主体である個人が経済の実態においては、関係に支配される個人になっており、この分裂にもとづいて、関係を制御する努力を諸個人が強制されるのが資本主義時代。実態において、失業という強制的な遊休は、資本のもとでの強制的な過重労働の裏面です。不況はこの対立的なありようを拡大して見せているだけともいえましょう。

2004年には、0.83、2006年に、1.06あったのが、2008年には0.77、2009年1月に、0.67、2月に0.61、3月には0.54、7月には0.41にまで急下降。

有効求人倍率です。
厚生労働省「一般職業紹介状況」2009年7月分

いわゆる不況が悪化するとは資本が利潤を回復するために生産能力をみずから破壊するプロセスです。飢えた人がいても資本が増えなければ生産物が廃棄されます。資本による労働力の購買が減少し、失業が増えます。産業循環を構成する起点は個人の自由な意思ではなく、資本蓄積です。資本の生活過程が産業循環です。

ワーキングプアの世界的な激増も予想されていること。
ILO 1/28

若年層の失業は世界共通の問題。先進諸国の25歳未満の若年失業率を、ILOは16.0~18.7%とみています。
ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説(2009年6月30日付第85号)

アメリカ合衆国発の金融危機が引き金となったこの現在の世界的な大量失業・雇用破壊ですが、すこし振り返ってみましょう。「貧困あるところ金融あり」ってわけで(そんな諺ありませんが)、貧しい労働者にマイホームを、という政策が、返済できそうもない大衆への過剰融資を行う環境づくりに転換し、労働者が労働力の代金を生活手段に変えること、家という生活手段を獲得しようとすることが、マネーの膨張のための道具になっていったところに、「サブプライム」危機の発端を見いだせます。労働で搾取され、消費でも搾取される。「サブプライム」層とは、貸付ける側からすると、返済が滞る危険度が高い層を指します。

最初の2年は金利を低く据えおく形で、サブプライム労働者にローンを組ませて家を買わせ、金利が上がるときに売却させる商売方法(ビジネスモデル)は、住宅価格の上昇を見込んでます。住宅価格上昇が続くということが、大衆から奪い、金融内部で奪い合うゲームが依拠する想定です。日本のバブルのころの土地神話みたいなもん。この想定が崩れるや、金融奪い合いは、損失の押し付け合いに化ける(これも奪い合いですけど)。

膨張を進める道具になった「証券化」という手法では、請求権が細かく分割され再合成されて価格を付けられ、世界中の金融機関に売られ、この証券化商品のなかにサブプライム関連も含まれていたわけです。ローカルな関係を壊して、商品の製造過程も成分も不明することで、商品となった請求権が世界中に分散するという仕掛けですね。

危機の要因はもう1つ、CDS(クレジットデフォルトスワップ)という金融派生商品(デリバティブ)。保険みたいなものです。クレジットデフォルトは債務不履行、スワップは交換。CDSとは、保険料みたいなものを払っておき、債務不履行にあったばあいに、カネをもらう契約です。焦げ付きのリスクをネタにした取引。たとえば、会社イに貸し付けているロは、ハと契約を結び、保険料を払います。会社イが債務不履行に陥ったばあいに、ハが代ってロに保険金を払う、というようなかんじです。CDSを売る者がまたCDSを買います。CDSの連鎖が拡がります。実際に用意されてあるお金以上に売買が膨らんでいきます。AIGの業績悪化の要因がこのCDSでした。

端折りますが、そもそもマネーゲームはその架空性ゆえ膨張できると同時に、破壊的な収縮を運命づけられているもの。

2007年8月にはパリバショック、2008年9月にリーマンショックときて、アメリカの投資銀行(証券会社)が消滅する事態となり、10月にはG7が行動計画を立て、11月にはG20金融サミットが創設されます。

くわしく知りたい人は、私とは立場が異なるものもありますが、以下の文章など。

「独白 金融危機編 サブプライム。実は誰も分かってない」『東京新聞』2009年3月17日朝刊、1面(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2009031702000043.html)。
「(大磯小磯) 債務担保証券のワナ」『日本経済新聞』2008年10月23日朝刊、17面。
「広がる倒産保険CDS市場(上)強まる株価との連動性」『日本経済新聞』2008年6月27日朝刊、16面。
「米コロンビア大教授ジョセフ・スティグリッツ氏に聞く―外貨準備制度見直し必要」『日本経済新聞』2008年10月30日朝刊、8面。
「自由競争主義に欠陥あった グリーンスパンFRB前議長」『朝日新聞』2008年10月25日朝刊、15面。
大橋和彦「CDS、金融危機深めた「落とし穴」(経済教室)」『日本経済新聞』2008年11月14日朝刊、25面。
高巌「金融危機で問われる企業倫理(経済教室)」『日本経済新聞』2008年11月21日朝刊、29面。
「第2特集:基礎からわかる 米国発・世界金融危機」『週刊東洋経済』2008年11月8日号。
宮台真司『日本の難点』幻冬舎、2009年、194-206頁。
日本経済新聞社編『実録 世界金融危機』2009年。
岩橋昭廣「世界金融危機とマルクス経済学」(『経済』2009年5月号)。
春山昇華『サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉』宝島社新書、2007年。
浜矩子『グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに』岩波新書、2009年。
水野和夫『金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 』生活人新書、日本放送出版協会、2008年。
林敏彦『大恐慌のアメリカ』岩波新書、1988年。

4月にロンドンで開かれた金融サミットでは、金融安定理事会創設、ヘッジファンドの登録制、タックスヘイブン(租税回避地)の規制強化、などを盛り込んだ共同声明が発表されました。

破壊的な金融グローバリゼーションに対していまや人々の抗議の意思表明もグローバルです。サミットとは、反サミット運動において存立し、グローバリゼーションは反グローバリゼーションにおいて自らを形成する。こんな風にもいえるかと。反グローバリゼーションは敗北しないために、物象のグローバリゼーションに対する、協同する人間のグローバリゼーションに転化せざるをえない。

デモのときの警察による横暴・人権侵害も世界中に公開されてましたね。歩いていたイアン・トムリンソンさんが、警察官による暴行を受けたシーン。

http://www.asahi.com/international/update/0421/TKY200904210083.html
http://www.youtube.com/watch?v=HECMVdl-9SQ
http://www.guardian.co.uk/uk/g20-police-assault-ian-tomlinson

法に反する暴力の行使ですから、警察官も処分されてるようです。ネットの力も処分を促したにちがいありません。
by kamiyam_y | 2009-09-21 20:18 | 現代グローバリゼーション | Trackback | Comments(0)
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