さっぽろ地下鉄のなかでマルクスを呼吸する、世界を呼吸する

無償労働のビジネスモデル化(2)

▽「議院内閣制」というべきところを「議会制民主主義」といってしまうのは愛嬌なのでしょうかねえ。

▽昨日の日経の朝刊に「53人内定取り消し」という記事。大学生が「全国一般東京東部労組」に加入して団交を申し入れているという内容で、舛添厚生労働相も「違法であると、企業や大学には周知したい。学生は泣き寝入りしないように」と言ったそうです。

厚生労働省も早速。

厚生労働省:新規学校卒業者の採用内定取消しへの対応について

全国一般東京東部労組http://www.toburoso.org/


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無償労働のビジネスモデル化(2)

中小企業保護のための規制の道具としては、下請代金法のほかに、普通に知られているのは独占禁止法です。

第1条  この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。


この法律を守らせるために取締る執行者は公正取引委員会。

第27条 内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第3項の規定に基づいて、第1条の目的を達成することを任務とする公正取引委員会を置く。


与えられた権限は、排除措置命令。違反行為を排除する命令です。

第49条 第7条第1項若しくは第2項(第8条の2第2項及び第20条第2項において準用する場合を含む。)、第8条の2第1項若しくは第3項、第17条の2又は第20条第1項の規定による命令(以下「排除措置命令」という。)は、文書によつてこれを行い、排除措置命令書には、違反行為を排除し、又は違反行為が排除されたことを確保するために必要な措置並びに公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を示し、委員長及び第69条第1項の規定による合議に出席した委員がこれに記名押印しなければならない。


独禁法の目的は端的にいえば、「不当な」行為を禁止することと、資本が停滞しないように独占化を規制することにあります。この規制はたえざる規制として発動しなければなりません。というのも、資本が生き生きとすること自体がたえず収奪と独占化をもたらすのですから。資本はこの法律をつくると同時にこの法律の前提を覆しつづけるし、この法律が生きているのもそのような運動が潜んでいるからです。

6月30日にヤマダ電機に対して公正取引委員会が排除措置命令を出したのも、この独禁法に則ってのこと。

公正取引委員会「株式会社ヤマダ電機に対する排除措置命令について」(2008年6月30日)

ヤマダ電機が違反した独占禁止法第19条を見てみましょう。

第19条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。


これだけです。シンプル。

第20条 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第8章第2節に規定する手続に従い、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
2 第7条第2項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。

第7条 2 公正取引委員会は、第3条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第8章第2節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から3年を経過したときは、この限りでない。


公正取引委員会の発表の「2 違反行為の概要」では、ヤマダ電機の違反行為は、「納入業者」に対して「合意」なしに、「費用」を「負担」せずに、「商品の陳列、商品の補充、接客等の作業を行わせるために」「その従業員等を派遣させている」ことと、同様に「合意」なく「費用」「負担」せずに、「店舗における展示のために使用したもの及び顧客から返品されたものを『展示処分品』と称して販売するために必要な設定の初期化等の作業のために、その従業員等を派遣させていた」ことの2つです。

排除措置命令書の「主文」では、ヤマダの仕事をただでさせることは、2005年11月以降、新規オープン、改装オープンのさいになされていたので、これを止め、それだけではなくもう行わないことを取締役会で決議しなさい、と命令。

同命令書の「理由 第1 事実 1(4)」によると、ヤマダ電機が濫用した優越的な地位、地位実質的な立場の非対称性はこう。

「納入業者にとって、ヤマダ電機は重要な取引先であり、納入業者の多くは、ヤマダ電機との納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため、納入業者の多くは、ヤマダ電機との納入取引を継続する上で、納入する商品の品質、納入価格等の取引条件とは別に、ヤマダ電機からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり、その取引上の地位はヤマダ電機に対して劣っている」。


「理由 第1 事実 2」では、「ヤマダ電機は、当該派遣のために通常必要な費用を負担していない」「平成17年11月から平成19年5月までの間に、延べ361店舗の新規オープン及び改装オープンに際し、オープン作業を行わせるため、納入業者約250社に対し、延べ約16万6000人の従業員等を派遣させ、使用している」と、新聞でも報道された16万人以上の無償労働の実態を明記してます。

前近代的共同体社会の掟のようにヤマダ電機の命令に従えという諸法度があるわけではありません。個別には独立した業者です。しかし、「社会的な流れと拡がりにおいて」は諸法度が再現します。これは近代社会の理念からは容認できません。搾取は合法化されません。

「初期化」については「理由 第1 事実 3(2)」には「2) 平成19年5月10日、本件について、当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ、ヤマダ電機は、同年11月ころ以降、前記(1)の納入業者にその従業員等を派遣させる行為を取りやめている」とあり、ヤマダ電機が違法性を理解していたわけです。公取が審査を始めたから止めている。

「主文」の「5」では、また、独禁法遵守のために、行動指針を作成・改訂し、従業員と役員の研修、内部監査を行い、そのための措置を講じ、公取の承認を得なければならない、とあります。

こうした社会的監督も社会的生産過程の姿の1つですね。

産業資本の蓄積は、市場を、市場が想定するものからずれた形で実現します。独占化もそのずれの1つです。倒産していく企業を、資本のたえず死んでいく部分とかんがえたら、死んでも貨幣や労働力や生産手段、商品といったその要素がすべて崩壊するわけではなく、他の資本の素材になって生まれ変わります。小資本は大資本に飲み込まれていく。資本は集中する。集中をともなって蓄積はすすむ。

小企業が解体されて巨大企業に完全に吸収されなくても、巨大企業が支配的地位を有する連関において小企業が存在していれば、これも市場の実現が反市場的であるというありかたの姿でしょう。

中小企業、といってもその独立性は否定されて、下請という形で資本の連続性の一要因をなしている。個別企業を超えた社会的生産過程の姿として系列化や企業集団、下請化がある。

資本はこうして独占をもたらすのですが、独占に対しては独占の弊害を抑えることも資本総体にとって必要なことになります。中小企業に対するあからさまな収奪は市場の想定に照らして不当なのですから。

こうして独禁法という規制の手立てが試される。独占の規制が資本にとっての活性化の側面をもつだけではなく、規制は資本による「不当な」行為を批判します。しかし、資本蓄積とは「不当な」関係の露出ですから、資本は独禁法を要請しながら、独禁法に逆らう実態をつくり、独禁法を活かしています。
by kamiyam_y | 2008-11-30 20:38 | 企業の力と労働する諸個人 | Comments(0)